A 協働によって地域を活性化させた海外事例
ここでは、主にアメリカとイギリスにおける協働の事例を紹介するとともに、協働することによって、どのように地域社会の活力を高めることができたかについてみていく。
1.アメリカにおけるNPOとの協働
アメリカでは、連邦政府による包括補助金の創設等を契機として、1970年代半ばから住民団体と行政の協力による地域開発が全国の地方自治体で展開された。
(1)連邦政府による地域開発支援制度
[1]コミュニティ開発包括補助金(CDBG)
1974年創設。住宅都市開発省の10の個別補助金を統合して設けられた補助金。地方公共団体と住民、NPO、地元の民間事業者が参加してコミュニティの再生計画を作成し、協調して行動したり、推進・開発組織を設立して、課題解決を図る
[2]エンパワーメントゾーンプログラム(UDAG)
衰退している地域の活性化を支援するため、支給される補助金。100余りの地域が指定を受け、各地域で再生戦略計画を策定し、計画に基づき、NPOが具体的な事業内容を提案し補助を受けて事業を行う。
(2)地方公共団体の動き
上記の動きを受け、市とコミュニティとの間にたって連絡・調整を行うプランナーが育成され、1980年代にはコミュニティをベースとして中低所得者向けに住宅供給や中心市街地の活性化事業を行うCDC(Community based Development Corporation)等の活躍につながったと言われている。
また、地方公共団体が、土地利用規制に関する権限を有しているため、これを背景に民間と交渉して開発計画を作成し、両者の協力により開発を進める事例が1980年代に増加した。具体的には、地方公共団体が民間へのインセンティブとして補助、融資、利子補給、土地の集約・安価売却等や土地利用規制の緩和を行う一方で、民間に対しては、開発の質の向上(デザイン調整、歴史的建築物保存の協力等)、市民の要請の受け入れ(コミュニティ施設整備、雇用機会確保等)、利益の一部の地方公共団体への還元(賃貸収入の一部返還等)等を求めている。
<具体的事例>
[1]シアトル市(ワシントン州 人口約50万人)
市内に設定された38の計画区域ごとに、住民のボランティアからなる「近隣計画委員会」が組織され、計画の作成と市への提案を行う。シアトル市では、学校区単位に94の自治会(5千人〜1万人程度)が設けられており、公共施設の管理等を行っている。近隣計画委員会は自治会等とは異なる組織であり、住民構成等を踏まえ、各分野から代表者が最低1名ずつ参加するよう配慮されている。また、課題別に検討会を設け、誰でも参加できるようになっており、検討会を含めた参加人数は、一区域に200人、市全体で3〜5千人程度。
委員会が提案した計画の一部は市のマスタープランの一部として公定され、また、個別施策の実施状況の管理も委員会が行う。
CDBGを原資とし、区域代表者の会議で各区域への予算配分を決定する。配分額は一区域当たり平均1千万円前後であり、委員会が直接管理している。
重要な案件は、アンケートや住民投票の結果をもとに決定する。
計画の一部は「ネイバーフッドマッチングファンド」を通じてNPOを活用・育成して実現する。
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■ネイバーフッドマッチングファンド
地域活動に対して市が支出する補助金。支出額は団体が自ら提供するサービスや資金、物資等に見合った額とされており、500ドルから10万ドルまで幅がある。使途も多様であり、街路樹、遊び場、コミュニティスクール等の設置のほか、地域団体の立ち上げ資金への補助等も行われている。原資はCDBG。
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[2]パサディナ市(カリフォルニア州 人口約10万人)
中心市街地の活性化を図るため、民間事業者と協力してショッピングモールを都心部に建設。民間事業者に財政的支援をする一方で、環境整備等について意見調整を図った。総事業費約1.2億ドルの約半分を市が負担。市が土地を買収し、整備を行った後で低価格で売却するとともに、駐車場整備やテナントとなるデパートの移転費用等に補助金を支出。その一方で、施設の設計や周辺環境と調和するための方策について、市と住民で構成するデザイン・コントロール委員会等が審査。数年にわたる交渉の末に両者が合意し、1980年にショッピングモールが完成した。
[3]サンフランシスコ市(カリフォルニア州 人口約70万人)
エンパワーメントプログラムを市内4地域に活用。総額約300万ドルの補助金を4地域で均等配分。
各地域で「再生戦略計画」を策定。計画には「中低所得者向けの住宅供給」、「教育用コンピュータの整備」といった具体的事項が盛り込まれ、補助金活用のガイドラインとなることから、関係者が作成に積極的に参加している。
「再生戦略計画」に基づき、地域内の各地区の代表者(住民、商業者、NPO等)25人で構成される委員会が、地域活性化のための施策を提案。さらに、NPOが具体的な事業内容を提案。
ある地域ではNPOから87の事業が提案され、その中から委員会が30事業を採択し、NPOが補助を受けて事業を実施。
補助金の支給は事業開始時のみとされており、その後は自律的事業として運営されることが求められる。
2.イギリスにおけるNPOとの協働
イギリスでは、サッチャー政権時の行政改革によって都道府県のような中間的な地方政府がなくなり(完全な一層制とはなっていないが)、国と市町村が直結するという風通しのいいシステムを作った。中央政府から各地方へ直接予算が与えられる地域再生予算制度がそのいい例である
また1970年代、かつて産業で支えた都市周縁部での荒廃が目立ち、それを改善・修復する目的で始まったのがグラウンドワークトラストである。
(1)地域再生予算制度(シングル・リジェネレーション・バジェット・略称SRB)
SRBは、複数の官庁によって所管されていた地域振興補助金を自由財源の形で一本化し、それをプロジェクトへのインセンティブとなるよう競争入札によって獲得できる制度である。1994年に制度化された。民間とのパートナーシップを必要とするところに特色がある。獲得できれば、政府から直接予算が与えられ、地域のパートナーシップ組織(市民組織、非営利組織、民間企業、自治体等の連合)が、コミュニティや地域の再生に取り組む活動が広がった。
(2)グラウンドワークトラスト
「住民」「企業」「行政」の3者が常勤スタッフのいる地域組織をつくるなどパートナーシップを組み、地域の身近な環境(グラウンド)を整備・改善(ワーク)する運動。国の機関である田園地域委員会が、1980年代の初めに実験的に導入した。これが、行政と企業、住民の三者によるパートナーシップの仕組みの開発につながった。
「グラウンドワークトラスト」は推進の牽引役として、三者のパートナーシップづくりの核として設立されており、1999年現在、全国で設立されたトラスト43か所、有給スタッフ約750名、年間の実施プロジェクト約4,000件の規模に拡大している。
これらの動きは日本でも伝わり、静岡県三島市や滋賀県甲良町の他、高知県や福岡県、北海道十勝等で活動が拡がっている。(総務省「共生のまちづくり懇談会」報告より一部引用)
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■高知県グラウンドワークストラスト設立準備委員会のしくみ
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