■主催:大会実行委員会(高知県・佐賀県・千葉県・神奈川県大和市・滋賀県) ■協力:淡海ネットワークセンター((財)淡海文化振興財団)

知事・市長セッション「市民・NPOとともに築く自立した地域社会」

■パネリスト
堂本暁子 氏(千葉県知事)/ 橋本大二郎 氏(高知県知事)/ 古川康 氏(佐賀県知事)
土屋侯保 氏(神奈川県大和市長)/ 嘉田由紀子 氏(滋賀県知事)
■コーディネーター
新川達郎 氏(同志社大学大学院総合政策科学研究科 教授)

[新川コーディネーター]
新川  この知事・市長セッションでは本日のフォーラムの趣旨に従いまして、一つはこれからのそれぞれの地域が自主的・自立的にどういうふうに運営をし、そして各地域をよりよい地域に変えていくことができるのかという、大きな命題の元にこれからぜひ取り組んでいかなければならない課題として、市民・県民、NPOと行政との協働という、このテーマについて議論をさせていただければということでございます。すでにここにご参加の知事・市長の皆さま方は、それぞれに地域の経営にあたりまして、「協働」というテーマをこれまでに大きく掲げ、またこの「協働」を進めるためのさまざまな地域の条件を整えるということに、いろいろとアイデアをお出しになり、そして努力を重ねられてきているところであります。
  今日はそうした各県・市の取組をご紹介いただき、そしてその中からこれからのそれぞれの地域での協働のあり方、そして地域づくりのあり方ということをお考えいただければというふうに思っております。
  本日会場においでいただいている方は行政職員がかなり多いかというふうに存じております。これからの協働のあり方ということについて、ぜひ知事・市長のお考えを聞いていただきながら、それぞれにまたこのことについて、今日のこの機会に思いを致していただければというふうに考えております。

  先ほど基調講演をいただきました早瀬さんのお話の中にもございましたように、ここのところ「協働」ということが大きくいろいろな場面で取り沙汰をされるようになってきております。有り体の言い方をすれば、今「協働」という言葉を掲げない地方自治体というのは、何かさぼっているというようなイメージすらあるかもしれません。しかし、もう一方ではそうした協働というのが本当にこれから地域のためになっていくのかということについては、まだまだ怪しいというふうに申し上げておきたいと思います。つまり協働ということを通じて、何をどう実現していこうとしているのか。そのためにどんな手立てを具体的にとっていったらいいのか。まだまだ手探りなのではないかというふうに思います。そしてそれは多くの自治体職員の皆さま方にとっても同じように課題であり続けるということだろうと思います。
  今日の基調講演との関連で言えば、ただ単に協働というのを経済効率や、あるいは行財政改革の一環として位置づけるというのでは、これはやはり本当の意味で地域のためになるかどうか。部分的にはなると思うのですが、本当の意味でなっているかどうかということは怪しいだろうということがあります。また、ただ単にこれまでのサービスや施策を良くしていく、改善をしていくという視点で協働を考えても、これもそれならちゃんと評価をやったらいいのではないかとか、あるいはアウトソーシングをちゃんとしたらいいのではないかというような話と同じレベルになってしまうということがあります。
  やはり大事なのは、本当にその地域の力、市民の力を高めるということだと思います。行政と市民との役割分担のなかで、NPOと行政のそれぞれがしっかりとした力を、能力をつけながら、しかし単独ではできないことを、地域のためにより高いレベルでサービスを提供し、そして地域の問題解決能力を高めていく。そういうプロセスの中にこの協働の意味、つまり市民力、県民力をつけていく、高めていく、そして全体として地域の力が上がっていく。そのような自治の力のようなものを強めていくということが大事なのではないかというふうに思っております。
  そうした観点で、今日おいでいただきました5人の知事・市長は、それぞれこれまでのご活動も、あるいはこれからのご抱負もこの協働に向かっていらっしゃるかと思います。どういう協働をこれからの地域自立に向けて、つまりは地域の自主的・自立的な運営のために考えておられるのか。まず、これまでどういう取り組みをしてこられたのかといったような話をお伺いをしたいというふうに思っております。そしてその後、少しそれぞれの地域の取り組みにつきまして、私との間で若干の議論をさせていただきます。2時間という短い限られた時間ではありますけれども、充実した議論ができればというふうに思っております。
  それでは早速でございますけれども、5人のそれぞれのパネラーの皆さま方に、これからの協働のあり方といったようなところについて、まずはお話を伺ってまいりたいというふうに思います。各県・市のNPO等との協働ということについて、特にそれぞれの地域が自主的・自立的に地域経営を進めていこうというふうに考えていかれる中で、どういうふうにこの協働というのを位置づけ、また市民・NPOとどういうふうに協働をしていったらよいのか、いろんなお考えがありそうです。それぞれの地域経営の理念であるとか、方向性、これと協働との関連でまずお話をお伺いしてまいりたいというふうに思います。
  高知県の橋本知事から、まずはお伺いをしていきたいと思います。よろしくお願い致します。

[橋本知事]
橋本  皆さま、こんにちは。高知県の橋本です。
  私が住民力を生かした地域の支え合いとか、地域との、また市民・住民との協働ということを言い始めたのは、4~5年ほど前のことになりますけれども、その一つのきっかけになりましたのは、高知で国民体育大会(国体)が開かれたということでした。と言いますのも、当時高知県には53の市町村がありましたが、どんなに小さな町や村でも一つの競技を受け持って担当していこうということに致しました。そのときに、人口が千人を切るような村、千人台、2千人台という村や町も多数ございましたので、そういう地域で国体という大きな競技を引き受けて、実際に運営をしていけるのだろうかと、いろいろな不安の声がありました。けれども実際に開催をしてみますと、地域の住民の皆さん方が会場の運営のお手伝い・案内だとか、また周辺に花を飾るとか、お食事の世話、民泊など、いろいろな形でボランティアとして活動してくださいました。この結果、県外から来られたお客様からも、変にお金をかけた国体よりもずっと温かい、良いおもてなしだったと評価をいただきました。またそのことは地域の住民の皆さん方にとっても、日ごろは過疎だとか、高齢化だとかマイナスのイメージで語られる自分たちの地域だけれども、自分たちもまだまだやってみればできるという自信につながったのではないかと思いました。
  とすれば、国体という、一時期やればそれで終わってしまう一過性のイベントにこういう住民の力というものを使い切ってしまうのではなくて、そういう力を日ごろからのお年寄りの見守りだとか、介護を受けるようにならないための健康づくりだとか、逆に少なくなった子どもを地域ぐるみで育てていくような仕組みだとか、また本県の場合には南海地震への備えという大きなテーマがありますので、地震に対する自主防災の組織づくりだとか、そういう地域での支え合いの仕組みに生かしていけば、もっともっと元気のある地域づくりができるのではないかということを考えました。
  ただ、こうした地域の支え合いによる協働、コラボレーションということを言いますと、行政がお金が無くなったから行政サービスから手を引いて地域に任せていこうと、こういう魂胆ではないかというご批判も当然出ます。そういうご批判に対しては、私は次のようにお答えをしてきました。確かに背景として県の財政、市町村の財政が厳しくなったということももちろんあります。けれどもそういう消極的な意味合いから、何か追い込まれて行政が手を出せなくなったから、地域の支え合いで住民による協働でということを申し上げているのではない。もっと積極的な意味があるのだということを言いました。
  と言いますのも、行政のサービスということにはいくつかの問題点というか、壁があると思っています。一つは公平性ということを貫かなければいけませんので、どの地域でも同じサービス、「金太郎飴」的なサービスになります。二つ目に縦割りの壁。文部科学省と厚生労働省。また厚生労働省の中でも保健、医療、福祉。福祉の中でもお年寄りの、障害者の、子どものというような縦割りの壁がいつまでもつきまといます。また行政のサービスというのは、する側とされる側、どちらかというと一方通行のサービスであって、お互いがそこから何かを感じ取り、学び合うという、双方向の形にはなりません。さらに行政の場合には、担当する職員というのは3~5年ぐらいで交代をしていく。人の継続性というものを保てません。こういうことに対して、地域の支え合い、住民やNPOとの協働というやり方であれば、その地域地域に合ったきめの細かいというか、かゆいところに手の届く、そういういろいろなサービスの形を考えることができます。また、地域の住民の皆さん方は、そもそも空いている学校の教室なり、廃校になった学校の建物を福祉に使うことに何の疑問も当然持ちません。また公務員の住宅が空いているとき、そこをNPOの事務所として使っていくことにも何の問題も感じません。というように、縦割りの壁というものが元々無いだろうというふうに思います。さらにこうした形の協働による、コラボレーションによるサービスというのは、する側もされる側もお互いが学び合って、感じ取って、元気になっていくという、双方向の作用があると思いますし、また地域でリーダー格になっている人がこういう活動をしていけば、県の職員なり、市町村の職員がというような、担当が替わったらということのない継続的な取り組みをしていけることになるのではないか、などなど、行政がやるサービスよりもずっと多くの利点があるということを思い、そういうことをご説明してきました。
  ですから、行政にももちろん大切な役割がありますけれども、それと同時にこれだけの利点・メリットのある、こうした住民力を生かした地域の支え合い、市民やNPOとの協働ということを考えていかない手はないなというのが基本的な考え方でございます。

[新川コーディネーター]
新川  ありがとうございました。実は5分というお願いをしておりまして、ほぼその時間内にお話を、しかも必要にして十分なお話をいただきました。ただし具体的な内容については、まだまだお話になりたい点があろうかと思います。そのあたりはまた2回目にということでよろしくお願い致します。
  続きまして、土屋市長、よろしくお願い致します。

[土屋市長]
土屋  神奈川県大和市長の土屋でございます。今日は基礎自治体の長は私一人でありまして、責任重大だなというふうに思っております。
  大和市ですけれども、どう紹介したらいいか。お城や神社仏閣、有名なものは無いし、湖や琵琶湖は無いし、海も無いし、山も無いし、有名なのは市長と言いたいところですけれども、市長は神奈川県内では一匹狼でございまして、新横浜と小田原の間に新幹線新駅なんか要らないと言って、一人だけ何か変わり者に言われております。
  全国的には比較的大和市は注目をいただいておりまして、私もこうしたお座敷がかかることがあります。それは何かというと、市民の「民度」でございます。大和の市民は本当にすばらしいと。厚木基地という悪名高い飛行機のうるさいところが、地名は厚木ですけれども、大和と綾瀬という市の真ん中にありまして、飛行機の騒音があるからかどうか知りませんけれども、市民が声も大きければ理屈っぽい、いろいろな意見を言うと。比較的リベラルな市民が多いということで。この市民を使わない手はないだろうということで、私は今3期目を終わろうとしておりますけれども、この12年間市民参加ということを進めてきました。市民参加とか、市民が主役の町とか、これはもうどこの首長選挙でも使う言葉であります。どこかの国の美しい日本みたいに、誰も反対できないような言葉ですけれども、これを本当のものにしようということで始めました。
  言葉で整理しますと、私は「参加」。その先にあるのは、究極は「自治」。自ら治める。参加と自治の間にあるのが「協働」。ともに働くということだというふうに理解しております。最初は参加。市民はお客さんでいいのです。行政が何かを提案する。これに対して市民が参加をしてくると。本当によく参加をしてくださいました。いいご意見をいただきましたというようなことで、平成9、10年あたりに、まちづくり条例とか、環境を守り育てる基本条例(環境条例)とか、こういう条例制定に市民参加を一生懸命促しました。そうこうするうちに、その2年ぐらい後に「大和市新しい公共を創造する市民活動推進条例」という新しい公共という考え方の条例ができました。この施行は平成14年ですけれども、2年ぐらいかけましたから平成12年ぐらいから進んできたのですけれども、100パーセント市民がつくった条例です。たたき台を市民がつくり、そして素案も市民が中心でつくり、やっとそれで私のほうに渡されて、法制担当等で整理をして私が市長提案で出すのですけれども、素案から市案、市の市長提案にするまでにも市民の皆さんの意見を聞いて、そしてこの条例ができました。
  この条文の前文で、「市民、市民団体、事業者それぞれが所有する時間や知恵、資金、場所、情報などを出しあい、社会に開けば、それはみんなのもの『社会資源』になります。行政も自ら資源を開き、『社会資源』の形成に参加することが求められます。市民、市民団体、事業者にとって、『社会資源』は『新しい公共』に参加する活動の源であり、未来を生み出す糧となる」というところが一番ポイントだと思います。こうした協働ということを大和はやるようになって、もう今4年目でございます。「参加」は今、大和市にとって当たり前。そして「協働」、コラボレートをするというところもスタートしております。
  それともう一つ、私が根が意地悪なので、市民同士競争させる。それから市の職員同士、部同士で競争させるということで、「市民自治区」という提案をしました。これは大和市内の地域を、だいたい人口が22万人ですから、2万人ぐらいのブロックに分けて、その地域で一番やりたいことを行政がやるのではなくて市民の皆さんやってくださいと。それを市は、行政はお手伝いしますよという、市民自治区という提案を致しました。これを地域でのエリア型とすると、この公共というのは、NPO団体等との公共ということで、これをテーマ型というふうに言っております。テーマ型の市民参加、協働、自治と、そしてエリア型の参加、協働、自治と。まだ自治には至っておりませんけれども、そういう二つの形で、大和はいろいろな活動を活発に市民が主体でやっております。これが私の求める方向性と言いますか、将来の姿に今ステップアップしつつあるというところで、もう5分過ぎてしまいましたので、この程度に致します。

[新川コーディネーター]
新川  どうもありがとうございました。具体的にもっと聞きたいところがたくさん会場の皆さんもあるかと思いますが、これまた後ほど少し深めてまいれればというふうに思っております。
  それでは続きまして、堂本知事、よろしくお願い致します。

[堂本知事]
堂本  千葉県知事の堂本暁子です。こんにちは。
  まずこのNPO活動推進自治体フォーラム、この第1回大会は千葉県で開かせていただきました。2004年です。去年は横浜市で開かれ、そしてやっと関西で滋賀大会になりました。来年は佐賀県ということで、だんだん九州の方へと動いていくわけですが。そのうち、また北の方へも行かなければいけないのではないかというふうに思います。いずれにしても全国各地でこのような形で行政とNPOの協働についてのフォーラムが開かれるということは、本当に私はうれしいことだと思っております。
  私自身は、自分でNGO・NPO活動をやっておそらく20~30年は経つだろうと思います。そして国会議員時代にNPO法の制定に3年間関わったということで、千葉県知事に立候補致しましたときは、NPO立県を掲げました。ところが、いざ私が知事になったら、千葉県はNPOと行政のコラボレーションということではゼロでした。「たぶん全国の46位か47位ぐらいです」とNPO関係の人に言われて、「えっ、そうなの」というのがスタートでした。しかし、そのときに行政の方で何かをすることは止めようと、千葉県民はどういうことを行政に求め、あるいはこれからの千葉県でのNPO活動はどういうものにしたいのかということを白紙の段階から伺うことから始めようということに徹しました。ですので、行ってみると少ないとこでは100人、多いとこでも200人ぐらいのNPOの方が集まって、ボソボソと始めたんですが、全くゼロの段階、無の段階から当事者であるNPOの方たちに考えていただきました。
  そして5年経つのですが、もう本当にめざましい進展。皆さんよくごぼう抜きとおっしゃってくださいます。NPO法人の数だけでいいますと、170しかなかったNPOが今は1,200近くなりました。そしていろいろなものをNPOの人たちと行政とが一緒になって、それをマニュアルとかそういうものにしてきました。例えば、「千葉県NPO法運用マニュアル」のこの厚さ見てください。こういうものをNPOの方たちと行政と企業の方も入っていただいて作成しました。今ではもう字引のようにして各自治体にお使いいただいていますけれども、そのように活動が広がっています。
  そして、このようにゼロのところから県民が立ち上がる形でつくっていき、他の政策にどんどん波及していったことが、一番大きいと思っています。福祉関係の計画をつくるときも、100回以上のタウンミーティングをやり、県民が参加してつくっていく。高齢者のときも、次世代育成のときも、今では県営住宅を建てるときも、習志野市なのですが、市民の要望に応えて、要望というよりも市民が主体的に参画してどういう県営住宅をつくろうかと。それを逆に行政が下支えをすると言ったらいいんでしょうか、そういうような形をとっています。それから今、中小企業の元気条例というのをつくっておりますけれども、それも中小企業の方に40回ぐらい、千葉県の職員は本当に大変なのですが、とにかく聞くことから始めよう、そして皆さんに書いていただこうということで、こういうものがどんどん、最終的に法律と関係のあるところはもちろんプロの行政マンが手を入れるのですけれども、そういう形でつくりました。
  一つだけ具体的なことをご紹介したいのは、そういうタウンミーティングの中で365日、24時間相談業務を受け付けて欲しいと言われました。それを行政がやったら大変です。だいたい5時にみんな帰るわけだし、365日できるはずがありません。では皆さんが自分でやりますかと聞くと、やると。それならやりましょうと。千葉県14の圏域がありますが、その14のところにそういった中核地域生活支援センターというのができました。社会福祉法人が主体でやっているところもあれば、NPOがやってるところもあれば、いろいろなところが、例えば養護施設の1室でやろうというようなことで始めました。これは県が計画したのではなくて、あくまでもNPOの側から出てきた要望、要望というよりも主体的につくったものです。
  そして今では大活躍をしているので、委託費だけは県から出させていただきますが、NPOの方が活躍している。そしてNPOのやる活動ですが、それは県のほうでメニューをつくるのではなくて、いろいろなNPOが行政と一緒に、例えば地図をつくりたい、例えば公園をつくりたい、例えば高齢者のこういうことをやりたいということをみんなで一つずつ、いろいろなNPOが申し出た場合には、それをNPOと行政も参加しますが、プレゼンテーションをして、そしてNPOの方たち自身が今年のこのプランはとてもいいと、そのプランをそれでは選びましょうと。それに対して県のほうで予算を付けるということでございます。
  中央集権はトップダウンでした。NPO立県はボトムアップです。中央で決まるのではなくて、県民が、市民がそれぞれ自分で発意した形で地域運営をしていく。そういった多様なガバナンス、そのために何かうまくいってないことを抗議するというような形。先ほど早瀬さんが努力をして疲れて、疲れの悪循環とおっしゃいましたけども、疲れる前にむしろ積極的に、前向きに企画を立てることのほうが精力が要りません。そういったことが私自身は理想だと思うので、千葉ではNPO立県ということをやっております。

[新川コーディネーター]
新川  ありがとうございます。千葉ではボトムアップ、地域からの力で県づくりをというお話をいただきました。
  さて、佐賀ではいかがでしょうか。古川知事、よろしくお願い致します。

 

[古川知事]
古川  私が知事になったのは、今から3年半前だったのですけれども、当時49あった市町村を1年間かけて全部回ろうということで、各市町村で語ろう会っていうのをやりました。人口が2千人ぐらいの小さなところもあれば、もちろん20万人ぐらいの大きなところまであるのですけれども。あるとき、ふと気付きました。だいたいこの語ろう会というのをやる会場は、町や村というところになると、だいたい公民館みたいなところが多いのです。佐賀県内の公民館の場合には、フローリングみたいなものがしてあるのですけれども、何か人が集まるような行事をするときには、折りたたみの椅子をだいたい予想される数ぐらい並べて、それで準備をするというパターンが多いのです。小さな町に行けば行くほど、この語ろう会が終わった後に、自発的に椅子を片付ける人の数がすごく多いのです。誰かがやれと言うのではなくて、みんなが当たり前のように癖になっていて、終わるときには自分の使った椅子を折りたたんで、元々椅子のあったところに持っていくということが根付いているというのを見ました。私はすごいところだなと思いました。実は、市民活動だ、地域の力だ、NPOだっていうことは、まるで都会が中心の、都会がスタートの、何かそういう新しい物事の動きのように思えるけれども、実はその地域そのものが昔から持っていた力というのがあるのではないかと。それを感じた瞬間でありました。
  また、昨年になりますけれども、3月に福岡県西方沖地震という名前の大きな地震がありました。福岡県西方沖地震ということなのですが、実は佐賀県内でも被害がありました。震度6弱だったのですけれども、震度6弱が1カ所出たというだけで、福岡・佐賀で震度6弱っていうことが全国で放送され、しかもそこの震度6弱の震度を記録した地点は、いつも震度が高めに出るという所として、関係者の間では有名な地点なのです。本当はそこの地点を変えればいいのですけれども、その地点を変えてしまうと、継続して観測していた意味がないというので、そういうふうな地震が起きてしまったわけなのですけれども。
  その日地震対策の仕事を終えて、私は家に帰りました。家に入ろうとしたら、そこで私の連れ合いが近所の人と話をしています。「何の話をしているのですか」と聞いてみました。近所のおばさまです。おばさまは、もう今日の地震でも私は大変だったという話なのです。「何がですか」という話をしていたら、もうぐらっと地震が来て、佐賀市内は震度4だったのですけれども、佐賀県というのは地震が無い県ですのでびっくりしたと。そして自分の旦那も大変だっていうことで、家のことを心配してくれるかと思いきや、大変だ大変だと言って外に飛び出してしまったと。「あなた、何しに行くのですか」と聞いたら、いやいや近くにお年寄りが独り暮らしでいるから、何人いるか分かっているから自分が見てくると言って飛び出してしまったというのです。その旦那さんは消防団員なわけです。飛び出したかと思ったら、またすぐ戻ってきた。自分の家のことも放っておいて、何で他の家の心配するのだろうと思っていたのに戻ってきたから、やはりまずは自分の家のことを点検するのかと思ったら、いやいや帽子を忘れてたと言って、消防団の帽子をかぶり直してもう一度出ていったというのです。そして自分の知る限りのそういう独り暮らしのお年寄りの様子を見てきて帰ってきたと。こんな話で、なんてひどい男だみたいなことをおっしゃっているのですが、口調は文句なのだけれども、傍でどう聞いててものろけなわけです。そんなふうに自分の家のことよりも、その地域のそういった方たちのことを心配するような人が自分の人生のパートナーでよかったわという、こんな話にほかならないわけであります。
  私はこういう地域が元々もっている力というものも、そしてまた、今までお話があったような志の縁で、市民・県民が集まっていって何か新しい活動をしようとする力も、私は両方ともこれからの新しい地域を培っていく力になり得るものだと思っています。
  今日のこのテーマは行政とNPOがどう協働していくかということなのですが、佐賀県ではNPOという言葉を、使っていません。私たちはCSOという言葉を使っています。このCSOというのは、そのNPO、志の縁で集まった方々だけではなくて、元々わが国にある、元々地域にある自治会、PTA、老人会、婦人会、消防団、そういう土地の縁で集まってらっしゃる方々も一緒にやっていきましょうと。そういう気持ちでCSOというふうに名付けて言っています。NPOとだけ一緒に何かをやっていくというのではなくて、そういう土地の縁で集まっていらっしゃる方々とも何を一緒にやっていくのかと。そういったことを考えるというのが、佐賀県のこの県民協働施策の基本になっているということがまず1点ございます。
  そしてそういう考え方に基づいて、さまざまな事業をやってきています。特徴的なのは、昔あった博覧会の基金がありまして、この基金を原資にして、地域活動の支援をしています。スタートさせるときには、上限が10万円、そしてまたおもしろい活動をするときには、上限50万円ということで、だいたい初めの一歩部門は2百数十万円、地域づくりの活動部門は、だいたい5千万円~6千万円の助成をしてきています。この支援にはまた特徴がありまして、どういう団体、どういう活動に対して支援をするかということに対して、私は全く関わっていないということがまた特徴であります。実はどういう団体から応募がきたかも私は知りません。また、どういう団体が選ばれたかということも私は知りません。すべて公募で、こちらがお願いした委員が自主的に議論をして、この議論自体が公開の場で行われています。自分たちのものがどういうふうに議論をされているのかを見ることができます。そうする中で、県民の代表者の方で決めていただいた結果を私は受け入れるということにしていまして、こういう県民活動の支援が何かしら私自身の政治的な支援団体への助成に繋がっていくとか、そういったことになってはならないと思って、あえてそういう形でやっていっています。これは私の支持者からは怒られていますけれども、多くの県民からは褒められていまして、これは大変いいことではないかなというふうに思っているところでございます。
  最後、この状況の話で1点なのですが、また議論が盛り上がればお話申し上げますが、今、佐賀県では「協働化テスト」というものに取り組んでいます。これは先般日本経済新聞の一面にも実は報じられましたし、そのほか読売新聞などの各紙も追って報道しているところなのですけれども、今、佐賀県庁がやっている仕事のすべてを基本的に協働事業の対象にしますということを宣言したということであります。これまでは、まず行政側が、この仕事とこの仕事は協働でやりましょうみたいなことを決めて、誰かやる人いませんかということで手を挙げてきました。そうやって行政側が出したもの以外は対象になりませんでした。つまり行政側が白と言ったもの以外は黒だったわけであります。ところが今回は逆にしています。すべて白だと。とにかく行政が、警察や教育のようなものは別にして、その他のものは基本的にすべて協働事業の対象とします。興味がある団体はぜひ申し出て下さい。そういうことで今募集をやっています。このことが市場化テストというふうに名前を付けられて、コスト削減のために佐賀県はこういう努力をしているというふうに報じられたのは、やや我々の目指すところとは違うのでありますけれども、こうしたところを通じてもっともっといろいろなことを一緒にやっていければと思っているところでございます。以上です。

[新川コーディネーター]
新川  ありがとうございました。佐賀ではこうしたさまざまな新しい試みを、しかし従来の狭い意味でのNPOではなくて、地域の力というのを上手に取り入れながら、特にCSOという言い方でお話ございましたが、そういう取組を今進めておられるということでございました。
  それでは1回目、最後になりましたけれども、ご当地、嘉田知事、よろしくお願い致します。

[嘉田知事]
嘉田  皆さん、こんにちは。こうやって錚々としたメンバーがこの滋賀の琵琶湖のほとりにお集まりいただいて、私はワクワクドキドキしています。
  私はまだ知事になって3カ月ちょっとで一番新米でございます。そういう新米というところから、どちらかというと少し県の政策そのものの背景をお話させていただきたいと思っております。
  私自身は滋賀県生まれではないのですが、1970年代から滋賀県各地を地域社会学の立場から訪問致しました。滋賀には3千ほどの自治会があります。そのうちかなりのところにお伺いしました。なぜかというと、それぞれの地域の仕組みが歴史的にどうできてきたかということが私の興味でございました。
  大きく分けて、今ちょうど古川知事が土地の縁のつながり、これはいわば地域自治組織。今日も町内会・自治会の代表の方が、たくさん来てらっしゃいますけれども。そういう土地の縁と、それからもう一つはテーマによる、いわば「好きづれ」と地元では言っているのですけれども、このテーマでこういうグループをつくっていこうという、この目的でという、目的志向的。それに対して、土地の縁のグループというのは、特定目的ではなくて、どちらかというと大変広い自治体的な仕事になってまいります。
  この歴史が滋賀県は大変古うございます。皆さん、今日例えば東近江市の方がお見えだと思いますけれども、それぞれの地域はだいたい平安から室町時代にすでに地域ができております。有名なのが、滋賀県の場合には中世の「惣村」です。これが自治組織の始まりでございます。土地を村で管理して、税金も皆で一緒に。ですから、税金を納める義務の組織なわけです。100軒あったならば、1軒が税金、年貢を納められなかったら、他の99軒が共同で、連帯でというぐらい、大変強いつながりのところです。水もそうです。水もその村として全体。それからお祭や防災もそうです。今自治体がやっている仕事、ほとんどがその惣村という100戸、200戸が基本の自治組織で生まれてきております。それが中世から、実は江戸時代が一番その自治が強かった時代です。明治の初期に1,600、このような自治がありました。皆さんが今おられるところの、その組織の名前、地域の名前はほとんどがそこに起源があると思っていいと思うのです。そのあと明治22年に、ちょうど今の小学校区ぐらいに合併がされます。滋賀県内全体で1,600の自治組織が250ほどになります。その後昭和30年代になると、今度は中学校区ぐらいの単位で50市町村になります。今それが合併して、滋賀県の場合13市13町になっているのですけれども、もう少し合併が進むと思うのです。
  実はその土地の縁を持っているグループというのは、かなり昔から公に水も土地も、そして防犯も神社もお寺もというところで動いてきている。それに対して、NPO、子育てのこと考えよう、福祉のこと考えようという新しい組織が二重になっているわけです。県としては、行政の話になってきますけれども、この両方それぞれの組織のいいところを含めた形でうまくつないでいくのが、県政における自治の出発だろうと思っています。
  今回、私自身かなり地域を回らせていただいて、本当におひとりずつの皆さんから、知事選挙では応援をいただいたわけですけれども、そのときにいただいた皆さんの思いが、実は「もったいない」という言葉の中に凝縮されていると思っております。この「もったいない」というのは、今直面している財政危機であるとか、あるいはさまざまな地域の自治組織の問題、特に税金の無駄遣い、「もったいない」。もっとちゃんと効率良く使おうという、そういう入り口の意味より、もっともっと深い意味がありまして、この言葉は逆に近江で皆さんから教わった言葉ですけれども。人やものが本来もっている力が発揮されないのが、「もったいない」。つまり本来もっている力をうまく生かしていく、それが地域自治の出発点だろうと思っております。どちらかというと、今まできらびやかな、大きく速く、そして遠くにと言っていた、そういう地域の願望が目の前の足元にこんないいことがあるじゃない、こんないいものがあるじゃないということで、ないものをねだるのではなくて、あるものを探して、そのあるものから地域の自分たちの力を発見しようというような流れを一つ提案したいと思っているわけです。
  そのときに、いわば地域自治組織、土地も水も神社のことも防災のことも、みなセットで引き受けている自治会組織のようなグループから、環境のことは、あるいは福祉のことはとNPO的な、この両方が横糸と縦糸になって新しい地域自治というのは生まれてくるのだろうと思っているわけです。
  それで実はこの後、ではどういう活動をしているのかということはまた次の課題として、まず問題提起を歴史的な視点からさせていただきます。

[新川コーディネーター]
新川  どうもありがとうございました。
  今5人の知事・市長の皆さま方から期せずして出てまいりましたのは、これからの地域づくり、あるいは地域の自主性・自立性の発揮ということを考えていくときに、一方では地域が持っている力、つまり元々そこにある地縁の力、土地の縁という言い方もありましたが、そういう地域力というのをもっともっと考えていかないといけない。そしてそういうところと行政というのが、きちんと協働をしていかないといけないというお話がありました。またもう一方では、嘉田知事が好きづれという言葉をお使いになられましたけれども、地域のテーマ、問題、課題、それを何とか解決しようという、そうした市民の力、これをやはり生かしていかないといけない。そういう力にもう一度きちんと目を向けないといけない。そういう活動が広がっていかないといけないという考え方の中で、そうしたNPO・市民活動と行政との新しいかかわり方というのもつくっていこう、こういうお話もいただきました。大きな方向性として、各パネラーの間にそれほど違いがあるとは思いません。協働を進め、そしてよりよい地域の自治を実現していこうという方向ではむしろ共通をしているのですが、もうすでにお分かりの通り、それぞれの各県・市の取組の中には、それぞれに非常に興味深い特徴的な活動があるようです。
  2順目は、それぞれの現在の取組ということについて、少しご紹介をいただきながら、進めていきたいと思います。しかし最初に申し上げましたように、ではその協働は本当に理想どおり進んでいるのでしょうか、うまくいっているのでしょうか。問題があるとすれば、どういうところにあるのでしょうか。こういうことを少しざっくばらんにお話いただければというふうに思います。そしてそうした課題を明らかにしていただくことで、これからの協働の進め方ということもよりよく、より深く理解できるのではないかというふうに思っております。
  さて、2順目は先ほどと順番を変えさせていただきまして、少し具体的なことはこの後でというふうにおっしゃっていただきました、嘉田知事からまずはお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。

[嘉田知事]
嘉田  それではここ数年、県としてどのような、このNPOあるいは地域協働の活動をしてきたかということをご紹介させていただきます。
  平成15~19年度の中期計画というのをつくっておりますが、実はこの中期計画の次を今始めているところでございます。ここの基本戦略の中で、「地域主義と協働によるモデルの構築」ということを基本の柱にしておりまして、また同時に行政改革大綱、ここでも多様な主体との協働を推進というところで、県民の皆さんの社会貢献活動のバックアップというところを出させていただいております。
  大変大事な仕組みとして、実はすでにこの前からあるのですけれども。県と市町とそれからそれぞれの自治会・町内会がどういう関係にあるかということでございますけれども、一番大事な基礎自治体の市町村が、実は村が昨年なくなりましたので市町ですけれども、その市町とつながった形で県の広報・広聴、そして知事が直接にそれぞれのグループと問題を発見する舞台として、いくつかつくっております。最新の、これは私になってからですけれども、「知事とふれあい座布団会議」というようなところで、先ほど古川知事がテーブルを片付けるという、私たちはその座布団ということで座布団会議という、あるいは「おじゃまします知事です」というのを新しく始めております。前任の知事のときには、「どこでもトーク」という、どちらにしろある責任を持った部長・課長・担当の者が知事と一緒にそれぞれの地域にお伺いして、問題を発見し、よりできるだけ陳情・要請ではなく、それぞれの地域の力を発見するという流れで動き出しております。
  その後、ではそれを政策にどうしていくかというところが、その実践的行動でございますけれども。いくつか柱になっている事業を紹介させていただきます。「ラウンドテーブルしが」これはNPOと行政が協働して定期的に話し合いの場を設置して、そこの中から課題の抽出に重点を置いて、どちらかというと職員なり、個別の部局のレベルでやっていただいております。
  それから「協働部活プロジェクト」。それぞれのテーマで、例えば環境学習だったら、どういうふうな推進ネットワークができるだろうかということで、あるいは持続可能な社会のための県民行動とはというような形で、個別にテーマごとに動いております。
  それからこの活動の中で大変大事なのが「淡海ネットワークセンター」です。淡海ネットワークセンターは、まさにNPO活動支援として、平成11年だったでしょうか、できておりまして。物理的な拠点だけではなくて、ここに県から人材も派遣をしておりまして、そしてさまざまな講習、あるいは情報交換の場もつくっております。ちょうどこの琵琶湖ホールの隣に「ピアザ淡海」というのがございます。その中にセンターがございますので、もし県外からお見えの方は一度足を運んでみてください。
  では具体的に先ほどの地域のつながり、そしていわばNPO、好きづれというので、どんな活動があるかということを紹介させていただきます。一つ目は、まさに特定の目的を持って、例として西大津駅の周辺の防犯推進でございます。西大津というのは、それこそ20年前はほぼ田んぼばっかりだったところに、新しくJR湖西線の駅ができて、そしてマンションができてという新興の住宅地でございますけれども、そちらで防犯組織を目的としたNPO法人をつくられたグループです。この活動の大変重要なところは、行政は行政、警察は警察というところで、どちらかというと縦割りになってしまっているところを現場のニーズの中で横につないでいるという、ここのところがNPOの大事な役割だろうということでございます。ちょっと時間が無いので、詳しくは資料をまたご覧になってください。
  それからもう一つの例は、元々あった地域のグループ・自治会でございます。野洲市というところの小南という200戸の自治会でございますけれども。ちょうどこの地域は川と川が交差するところで、昔から水害が多かったところです。その昔から水害が多かったというところで、地道に水防組織・消防組織、そしてそれが現在の防犯組織につながっておりまして、若い人たちは義勇消防隊、それから女性は女性消防隊、高齢の方はシルバー消防隊というふうなところから、自治防犯組織・防災組織をつくっております。ここの賢いところは、伝統的な行事、例えば小正月、左義長と言います、1月15日にお正月のお札などを燃やす、火を点ける左義長ですけれども、その左義長で集落中が火を燃やす、そのときに炊き出しの練習をするのです。大きな100人ほどが食べられるような鍋で。つまり文化的な、伝統的な行事の中に、防犯活動などを入れ込んで、無理のない工夫をしてくると。これなどは、大変賢いやり方だろうと思っております。その炊き出しを毎年1回練習して。ちょうど阪神大震災のときには、自分たちで炊き出し応援団で神戸まで応援に行ったというようなことで、大変活発な地域活動していただいております。
  ですから、まとめ的に言いますと、滋賀県というのは、本当に元々の地域自治組織も、中世の惣村から、江戸時代の地域、大変強い伝統があり、その上にNPO組織が関わり、実はNPOの組織率では、全国でも8位(人口当たりのNPO法人数)というぐらいの活発なところです。この二つをうまく組み合わせながら、これから行政がどういうふうにそこで工夫をしていくかということの、まさに実験場のような場所だろうと思っております。

[新川コーディネーター]
新川  ありがとうございました。嘉田知事からは、特に滋賀の地域力、地域自治組織の伝統と、そしてNPO活動の活発さのご紹介があり、これをどううまく組み合わせて、これからの滋賀県の地域づくりを進めていくのか。そこに行政がどういうふうに上手に関わっていくのか。このあたりを課題として、ご提起いただいたものと考えます。
  それでは古川知事、いかがでしょうか。先ほど事例についても少し触れていただきましたが、特に力を入れておられるような点も併せてご紹介をいただき、また今後の課題もお教えいただければと思います。よろしくお願いします。

[古川知事]
古川  特に力を入れている点という意味でいけば、だいたい協働という名の活動というのは、県庁よりも本当は市役所や町役場がやっている仕事と関係の深いことが多いのではないかなと思っているのです。それをすっ飛ばして県だけが「協働だ、協働だ」と言ってみたところで、本当に地域の活動というのは、そこの地域の役場の職員の方や市役所の方が分かってくれているかどうかというのが実は一番大事になると、私自身は思っているのです。
  それで佐賀県では、かつては七つの市しかなかったので、その七つの市にそれぞれCSOの活動を支援していくオフィスをつくっていこうと。そのオフィスをつくっていくときには、もちろん地元の市にもいろいろな意味で支援もしていただき、理解もしていただくという前提でつくっていくことによって、その輪を広げていきたいというふうに思って、それをやっています。
  私が知事になった時点で、県都である佐賀市というのは、当時の市長も非常にこうしたことにご理解があったので、佐賀市だけ非常に光っていました。すばらしいなと思っていました。佐賀市をエリアとしてやることと、佐賀県をエリアとしてやることは、そこに多少ずれがありましたので、できるだけ多くのことを多くの地域にこうした動きを広げていきたいと思って、今そういった支援オフィスの設置を取り組んでいます。
  ところが、なかなかこれはハコモノをつくるぐらいのところは簡単にいくのですが、つくるといってもだいたいは空家になったところとか、空き商店街だとか、そういったところを借り上げてやるようなものなので、簡単にできていくのですが、そこを実際に活動の場としてCSOがいくつも入ってくるとか、何かあったときには、例えば地域でイベントやるときの事務所にそこを借りてもらおうとか、そういったことになるとなかなか利用が進んでいないというのが一方の現実であります。なぜ敷居が高いのか、なぜ使われないのか。オフィスが必要というのは、ひょっとしたら自分たちだけの思いよがりではなかったのかと。そんな反省なんかもしています。していますけれども、きちんとこのオフィスの目指すものというものが分かってもらえれば、どんどん広がっていくのだろうなという、そんな気がしております。
 地域活動が盛んなところですと、例えば公民館なんかを借りて、簡単な事務所機能でやるみたいなところもみられるものですから、町村部みたいなところになると、そういった機能はあまり要らないのかもしれません。今回の合併で佐賀県は10市になりましたので、希望があればその10市でもやりたいという気持ちで、今取り組んでいるところです。
  あと、逆に非常に思っている以上に利用が活発だというのが、市民活動の応援のポータルブログでございます。小さな団体では自分たちでホームページを立ち上げようとすると、サーバーを借りたりとか、ソフトを使ったりとか、なかなか敷居が高いという団体が多いのですけれども、ブログであれば誰でも簡単に書き込みができます。というので、そのCSOの活動を応援するというホームページを立ち上げて、そこに各CSOがブログ形式で書き込みをするようにしました。これはもうメールをやるのとほぼ同じ感覚ですから、非常に気安くアクセスしていただけます。今、月2万件のアクセスがありました。これはもうかなり、われわれが予想している以上の利用があります。これはやっぱりしっかりとした管理人が必要で、今この管理人をやっている職員が非常にこうしたことに理解があるので、そこで場が盛り上がっているのかなという気が致しております。残念なことにこの職員は臨時で採用している、元々NPOの活動をやっていた人なのです。そういった人がこういうブログの担当者になると、非常にブログもいい場に、荒れない場に、みんなから喜ばれる場に成長していくのです。残念なことにこうしたことのセンスを持ち、かつ専門性を持っている行政職員が足りないというところも一つの問題点なのかなと思っています。
  私は地縁団体ではなく、志縁団体であるNPOの方々に求めているのは、まずは専門性であります。今佐賀県では、消費生活センターの相談業務をすべてNPOに委託をしました。県が委託をしたことによって、これまで他の市や町の消費生活相談センターとか、消費生活相談コーナーも多くはそのNPOが受託をしていましたので、結果的に見たときには、そのNPOが県内の市や町、そしてまた県で相談されるあらゆる相談の事柄の一番大きなデータベースを持つことになったのです。それを実現することによって、これまで県が頼んでいた嘱託の人がやっていた時よりも、はるかに県内の事情をよくつかむことができるようになりました。
  悪徳商法というのは、ある日突然バッと全県的に広がるのではありません。ある悪いことは西の長崎県からやってきます。ある悪いことは東の福岡県からやってきます。そしてじわじわと広がっていくのです。数日前に県の東端で起きたことは、数日経つと佐賀市までやってきて、また数日経つと今度西の端まで到達したりします。そういったことの動きをキャッチできます。そうすると、こんなふうに何か公民館を借りて、何かサランラップを配りますから来ませんかみたいな奴に要注意みたいなもので。そこで布団を売りつけられたら、2千万売りつけられた人がいますみたいな話とかをすると、それはもう起きたことが事実ですので、非常にそういったもので商売がしにくくなったという、悪徳業者からの悪い評判を聞いてまして、という意味では佐賀県がいかに住みやすくなっているかということの表れだと思うのです。
  だからそんなふうに今まで行政がやっていたよりも、NPOの方たちがやることによって、県民から見たときのサービスが向上している。そういったことの例をいくつも出していくことによって。「協働、なんでそんなことしなくちゃいけないんだ。役所の人間はバカだと言うのか」と、本当にそういうことを言う人がいっぱいいるのです。うちの県庁でもアンケートやると、「なんでこんなことしなければならないのか」ということばかり書いてくるのです。でもその答えがいっぱい返ってくるということは、私は健全な姿だろうと思っています。思ってもいないのに、知事が言っているから丸つけろとかっていう北朝鮮的職員が少ないということだけでも、わが組織の健全性の表れだと思うのです。やはりそういったところには、「やっぱりよかったでしょう」という例をとにかく増やしていくこと。自分たちがやれば100パーセントで、何か協働でやっていくと70パーセントだというときに、どうしても否定的に見る人は3割のほうを見るのです。ところが7割は成功しているというか、行政がやるよりもはるかによくできているところがいっぱい見えてきます。
  今日ここにお越しの皆さま方は、そういう協働事業を進めていかなければいけないということを少なくとも背負って、それで毎月の月給をもらってらっしゃる方が多いと思うので、そういう方に直接今一生懸命やってる側としてのアドバイスを申し上げれば、やはりスモールサクセスというか、ちょっとしたことでもいいので、協働していくことによって良かったことというのをどんどんみんなに知ってもらうということこそが、少しずつ穴が広がっていくことにつながるのではないかと思っています。以上です。

[新川コーディネーター]
新川  ありがとうございました。NPO活動・CSO活動の推進にもミスマッチというのがあって、なかなか場づくりがうまくいかないところもありますが、それでもがんばっておられる様子でした。また、こうした市民活動にやはり専門性が期待をされるということも指摘いただきました。そしてその専門性がさらに高まることで、行政の、言ってみれば独占状態ではない新しい市民サービス・県民サービスというのが可能になってくる、レベルの高いサービスが可能になってくる、そんな例もいただきました。しかしまた、その専門性をどうやってつけていくのか。これも大きな課題としてご提示をいただいたかと思います。
  続きまして、堂本知事からも少し具体例に即しながら、今後の課題のようなことを触れていただければと思います。よろしくお願いします。

[堂本知事]
堂本   千葉県では「あすのちばを拓く10のちから」を掲げておりますが、これは今までの言い方で言いますと、県の5ヶ年計画のような性格のものです。中長期の計画ですが、あえて計画という字を知事としてはどうしても避けたかった。それは先ほど嘉田知事からもお話がありましたけれども、もっと県民の力、地域の力を連動していくことによって、全体としての県の力をつけていくということを目指すということで、「あすのちばを拓く10のちから」という題をつけました。そしてそれ以後、「生きるちから」とか、「ともに育つちから」だとか、これも全部県庁横断的に取り組むために、こういう形で行政の課とか部の割り方ではない形で計画をつくりました。
  この中で、県政運営の基本理念については、1回目のお話のところに戻りますけれども、「県政の出発点は県民です」とこういう書き出しでやらせていただいております。
  次に、NPO立県のステージなのですけれども、先ほど申し上げたように千葉県は46位か47位だったのですが、第一ステージ(平成14~17年度)では、NPO自身が力をつけていくと、そして実際に成果を上げていくなかで、事実、ずいぶん力をつけました。成果が上がったと思っています。大変活発な活動は今までもあったのだと思いますけれども、行政とのコラボレーションということで言えば、ずいぶんと進みました。
  しかし、この3年間の反省で、今佐賀の古川知事がおっしゃったように、私もやはり今日は大和市の土屋市長しかいらっしゃいませんが、本来、行政で一番NPOと協働していかなければいけないのは、市町村だと思います。第二ステージ(平成18~20年度)の目標として、「パートナーシップ型行政の発展」のところに、「市町村行政との連携・協力」を掲げていますが、実質的にこれから単に県が市町村を飛び越えて県民の方と一緒にやるというのではなくて、市町村と県と、そしてNPOや市民・県民とともに活動していくというやり方に、今大きなウエイトをもっていっております。
  先ほど少しご説明いたしましたけれども、県とNPOが協働することによってとても相乗効果が期待できる事業、これを県庁や行政が考えるのではなくて、NPOの人たちも、こんなことをここの町なり、市なりでやったらいいのではないかと、こういうことを行政がやるべきだと思いついたら、それを公募なのですけれども、提案していただく。それを公開のプレゼンテーションをして、公募委員の方たちが、県庁職員も参加はしていますけれども、みんな自主的に選んでいただくと。そしてそれが本当に効果のあるものだと考えられたら、それに予算をつけて事業を実施するということをやっております。
  それを今度はぜひとも市町村と一緒に、第二ステージではやっていかなければいけないということで、地域の課題の解決に取り組むNPOに県と市町村が一緒になって協力するという、これはたぶん全国で初のモデル事業になると思いますけれども、従来はNPOと県でしたけれども、そうではなくて、NPOが先に出るという形です。
  先ほど早瀬さんのお話の中で、NPOの「位置」のお話がありました。市民はどこに位置しているのか。前は国があって、県があって、市町村があって、それからNPOがあって、市民があってというようなイメージを皆さん持ってらっしゃるかもしれない。しかし、分権の時代は逆転でございます。先ほども申し上げたように、本当の意味で地方自治を取り返すのであれば、地方の活性化、地域づくりを実現するのであれば、その最先端に立って、自主的に自分で意識を持ち、参画し、そして提言し、実行にも参画するという、そういった地域市民がいてはじめてそれぞれの町や村が元気になる、市が元気になる、そしてそのトータルとしての県が元気になるのだと、私は確信しています。ということで、やはりトップに市民が、先ほど申し上げたように、県政の主役はあくまでも県民です、ということからスタートをしております。
  このような反省に基づいて、今年はNPOのやることを市町村とのパートナーシップを強力に構築して、その地域の課題の解決をしていくということをやっていきたい。
全員   具体的には、例えば私がとてもおもしろいなと思ったのは、四街道市という市なのですけれども、数多くのNPOが参加して公園のようなものを作ったり、それからみんなが楽しく過ごせる場所づくり、住みやすいまちづくりをするという、そのようなプロジェクトもありました。また、市原市では、里山の整備や、それから産業廃棄物の不法投棄から地域を守るための意見交換会などをやるような、そういったNPOが中心になっての会議もありました。そして中学生と地域住民との交流を進めた栄町のケースなど、いろいろ具体的に出てきておりますけれども、そのような形で、やはり市町村に相当に力を入れていただきたい。そういう意味で今日ももし市町村の職員の方がいらして、それからNPOの方もこの会場におられたら、ぜひとも都道府県よりは市町村が本当の意味でのNPO、佐賀県はCSOとおっしゃいましたが、市民活動です。本来、衆議院を通過したときは、「市民活動促進法」という法律でした。この法律の名前に反対した人が参議院にいたために、仕方がなく「NonProfit Organization」に変えざるを得なかった。皆さんもそういう意味でNPOと行政のコラボレーションということだけでお考えにならないで、市民活動を促進するというのが、法律の趣旨です。
  そしてNPOと行政がコラボレートするだけではなくて、先ほど申し上げたように福祉の問題、あるいは今千葉県では生物多様性の保護と保全、そして再生というビジョンづくりをやっておりますけれども、そのときには環境関係のNPOから、市民の方から、全部にまた「いろは」の「い」から参加していただくという形をとっています。中小企業を支援するような条例づくりもそういう形をとっておりますし、ですから、単独にNPOとの関係ではなくて、行政で一つの大きな事業についての問題、商工関係の問題であれ、あるいは環境や福祉や生活の場面であれ、いろいろな形でそういう市民の方たちが主体的に参画してくださることによって条例ができたときに、生きたものになる。その方たちが実行部隊になってくださるということを、この5ヶ年の経験で私は知りました。ですので、最初から参画してくださることによって、自分のものになるのです。自分のものになって、ご自分で実践してくださる。そこに力が、本当に力の渦ができます。その渦がいくつも重なり合って、大きな大きな渦になっていく。その力こそが、真の地方分権的な社会の構築だろうと思っております。

[新川コーディネーター]
新川   ありがとうございます。
  それでは続きまして、土屋市長から、これまでの取り組みについていくつかお話はいただいておりますけれども、あらためて興味深い内容でもございますので、簡単にご紹介をいただきたく存じます。そして今後の協働から自治への課題ということになるのかもしれませんが、少しお話を展開していただければと思います。よろしくお願いします。

[土屋市長]
土屋   神奈川県全体でもNPOの数は結構多ございます。1,750あります。大和市がそのうちの35ですけれども、非常に早い段階から活発にやっているということで。これは明日の第3分科会で大和の協働事業の発表等もあるようですので、そこでぜひ見て聞いていただきたいと思います。
  4年前構造改革特区第1号で、大和市はみんなで進める地域福祉特区というのを申請致しました。全国の第1号で認定を受けた自治体の一つでありましたけれども。4月21日は、私の3期目の市長選の出陣式の翌日の月曜日で、何でこんなときにと思ったのですけれども、総理官邸に行って構造改革特区の第1号認定を受けました。これがNPO法人ワーカーズ・コレクティブケアびーくる等々と一緒になって、まさに協働でやってまいりました。障害のある人たちの輸送をケアびーくるというNPO法人が運ぶ。有償運送でございます。これは平成18年6月で道路運送法が改正になって、施行規則の一部改正により10月でもう全国展開になりましたので、この特区が廃止になりました。4年前からこういうことを実際に大和はやっておりました。ほかにもいろいろなNPO法人等とやっております。
  先ほどお話しましたように4年目ですから、この4年間市民提案と、それから市から行政提案、それぞれが提案をする。それを公開プレゼンテーション、みんなでその説明をする。それに対して質問をするというようなことをやりました。決定したこともすべて公開で。基本は全部ディスクローズしまして、そういう中で進めております。   最初は新しい公共を創造する市民活動推進条例も市民が出してきて、あれよあれよという間に議会でも全員賛成で通って、順調にスタートしました。私はこういう順調にスタートすると、後でいろいろ苦労するぞと言っておりましたけれども、その通り3年目ぐらいになってから、市民提案したのに行政のほうが腰が引けているとか、あるいは一部の団体だけが申請しているのは問題があるのではないかとか、いろいろな議論が出てきております。
  そういう一方で、先ほどお話しましたように、地域・エリア型としての市民自治区というのを提案致しました。これはコミュニティという表現がいいのか、あるいはイギリスあたりの教区、教会を中心としたパリッシュという表現がいいのか、いろいろ考えたのですけれども、日本語で分かりやすく「市民自治区」ということで、各地域人口2万人ぐらいのところで、いろいろな一番重要な今やりたいことを皆さんでやってくださいということを提案致しました。
これは今日はNPOの話だからあまりできないのかなと思っておりまして、今日来る新幹線の中で見ましたら、今日の定義ではNPO法人だけではなくて、自治会・町内会の活動も含めるということでしたので、これも紹介をしてるのですけれども、地域を22ぐらいに分けて活発に防犯パトロールをやったり、美化活動・環境運動をやったり、教育をやったり、福祉活動をやったりということで、これも今全国的に注目を浴びております。
  そのきっかけはすぐ大和の隣に横浜があり、川崎があり、多摩川を渡ると目黒・世田谷がある。こういうところで、本当の地域に行政サービスが行き届いているのかという問題があります。一方では合併、合併で進んできてますと、皆さんのところもそうだと思うのですけれども、今までの生活圏・文化圏である村といったようなエリアの行政が大きくなることによって、行政サービスが行き届かないのではないかと。ローカルな問題でもあるし、首都圏の問題でもある。大和のようなところでモデル的にやると、何かモデルになるのではないかということでやりました。最初は、また市長は俺たちに何か働かせるのかとか、俺たちに汚い仕事をさせるのかとか、あるいは防犯パトロールなんて危ない目に遭わせるのかとか、反発は非常に多ございましたけれども、やってみると効果が現れる。やってみるとおもしろいって。もうこれは参加から協働、自治に行っているような形になっております。やってみるとこれはおもしろいということで、今、対象人口で7割、面積でも70数パーセントの地域で活発に市民自治区、これは名称は「地域の底力事業」とか、「はじめの一歩型」とか、いろいろなレベルによって差を付けていますけれども、そういう活動が活発になってきております。
  こういううるさいけどよく動く、働く市民ばかりですから、その間自治基本条例をつくるときも、皆さんでつくってもらいたいということでお願いしましたら、「自治基本条例をつくる会」という会をつくって、実に182回自分たちで会議をやったり、外に出ていって会議をやったり致しました。全国的にもニュースになりましたけれども、住民投票を16歳以上にしたり、議会でも修正があったり、いろいろあったわけですけれども、この約2年間の間に。これが非常におもしろいから、本にすれば売れるだろうということで、「ぎょうせい」から出版を致しまして、『ドキュメント・市民がつくったまちの憲法‐大和市自治基本条例ができるまで』という本を出しました。明日お売りをします。1,800円です。ぜひ、お買いいただきたいと思います。
  それと大和は条例制定、それから自治基本条例、今の市民自治区、協働、ごみの有料化、いろいろなことで非常に視察が多い。年間300件視察がありまして。横浜が400件で、大和が300件。横浜は中田市長が1人あたり5,000円と有料にするということでしたので、私はそうはしないけれども、『大和市のアドバンスト・アイディアズ 条例・政策・計画実現集』というこの本をつくりまして、1冊500円で視察に来た方には無理やり買っていただいております。大変これも売れ行き好調で、これも明日売らせていただきます。500円でございます。
  こんなことで大和が発信をする。そして大和がいろいろなことをモデル的にやるということで、自治を高めているのが今の大和市の状況でございます。
ことで、自治を高めているのが今の大和市の状況でございます。   理想どおり進んでいるかというご質問でしたけれども、私は理想到達点は無いと思います。この間も嘉田知事がテレビで地方自治体は民主主義の学校である、教室であるという表現をされていましたけれども。夕べでしたかね。まさに私は自治体というのは、民主主義の学校であるし、こういうことをいろいろなことをやり続けることが、それがすなわち自治だろうというふうに思いますので、理想の姿というのは、ある意味では永遠に来ないかもしれない。ただそれをやり続けることが必要なこと、それが民主主義だというふうに私は考えております。以上です。

[新川コーディネーター]
新川   どうもありがとうございました。市民自治区のご紹介、それから自治基本条例づくりのお話がありました。私も何人かの友人が関わっていて側聞しましたが、本当に大変だったというのが関わった方の率直な印象だったのです。逆に言うと、それぐらいやはり頑張って市民の方々の力を合わせて自治というのが実現をしていくということなのだろうし、それがあって成果も大きくなるということなのだろうと思いながらお話を聞いておりました。どうもありがとうございました。
  それでは橋本知事、お待たせ致しました。最初、本当に短くコンパクトにまとめていただいたのですが、どんどんみなさん熱が入っておりますので、しっかり熱を入れてお話をいただければと思います。よろしくお願い致します。

[橋本知事]
橋本   先ほどは地域の支え合いの仕組みというのが、通常の行政サービスよりもいい点がいっぱいあるという話をしました。けれども、こんなにメリットがある、いい点があるからもう後は地域でどうぞ勝手にやってくださいと言っても、なかなかこういう協働のサービスづくり、地域での住民の支え合いの仕組みづくりというものが簡単に立ち上がっていくわけではありません。何かをやりたいなと思っていても、どういうふうにまず取っ掛かりをつくったらいいのか、それが分からない。また、少し進み始めたら、こんな壁にぶつかる。こんな問題が出る。ほかの地域ではどんなことやっているのか知りたいけど、どうやって情報を集めたらいいか分からないなどなど、さまざまな問題・課題があると思います。高知県では、そういう地域の皆さん方のいろいろな活動を支えていく、応援をしていくために、県の職員が県庁の中で、または出先の事務所の中で、縦割りの仕事をやっていくのではなくて、地域の現場に出て皆さん方と一緒に仕事をしていくという仕組みを、2003年(平成15年)から始めました。
  最初の年は、地域の元気応援団という名前で、高知県東西に広い県ですけれども、七つのブロックに分けて、1ブロックに1人ずつその応援団長という形で担当者を配置致しました。その後それを50人にし、そして現在は県内の30ヶ所に60人の県の職員を地域支援企画員という名前で配置をしています。マスコミで言えば遊軍にあたるような仕事で、地域に出かけていって、何かやりたいというようないろいろな思いを引き出していく。何かやりたいことが分かれば、ほかの同じような地域でこんな事例をやっているので、こういうようなやり方でやってみませんか、というふうなご紹介をしていく。また、初めて取り組むときには、法律制度の壁だとか、公務員の住宅が空いてるけれども使えないかとか、いろいろなご相談や問題が出てきます。そういうことの相談相手になり、その課題を解決するお手伝いをする。そんな仕事をしてきました。最初は、何をやるのか見えにくいとか、知事のパフォーマンスではないかといろいろなお声がありましたけれども、だんだん地域の方々にもご理解を得て、また市町村長にもご理解を得て、ずいぶん活動としては定着をしてきていると思います。
  例えば高知市のすぐ西側に仁淀川という川が流れております。四万十川が有名ですけれども、川としては仁淀川のほうがずっと景観からいっても私はすばらしい川だとは思うのですけれども。そこで農家の民宿、また林家の民宿、そういうことをいろいろやりたいというお声が出る。そうしますと当然、多くの方々ご承知でしょうけれども、農家民宿などをするとすれば、消防法、旅館業法、また食品衛生法等々、数々の法律の規制を受けます。それをクリアしようとすれば、1人で保健所にも何回も足を運び、土木事務所にも何回も足を運びということになります。そういうことをワンストップで解決をしていく。さらにその仁淀川というところの上下流の農家民宿をつないでいって、七つ、九つと増やしながら、それをまた県外に売り出していく、PRのお手伝いをしていく。そんなこともやっています。
 それから自主防災、災害に備えるということで言えば、単に講師の先生を呼んできて、座学でお話を聞くというだけではなくて、それではみんなの地域でどこが危ないか、一度見に行ってみようよというような話をして、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に地域の道を歩いてみる。そうすると、ここの崖がこんなで危ないね、このおうちは何かあったら注意しないといけないねということをみんなが気づく。そしてみんなで、難しい言葉で言えばハザードマップ的なものを地域で作っていく。そして地域で自分たちが作ったから、役所が作って広報の文書で配布をするのではなくて、そういうもので自分たちが、それでは次に何をしようかという思いになっていく。そんな活動のお手伝いをしてきています。事例を挙げればいくつもあってきりが無いので、この程度にしておきますけれども。
  事例としては、だいたいうまくいっている話をしますので、うまくいってないということよりも、どうして広がらないかなというのが、正直なところです。現実には、今も35の市町村があって、地区から言えば数多くの地区があるわけですが、そういうところで今申し上げたように、地域支援企画員をうまく活用して地域の支え合いの仕組みをつくっているというところがまだまだ少ないと思います。
  そういうものをどうやって広げていくのかと考えたときに、課題はいくつもありますけれども、一つはやはり「地域の人材」。地域で核になる人をどうやってつくっていくかということです。そのときには、今日はNPOという言葉が使われていますけれども、今、土屋市長からもお話があったように、古くから、古くからって言うと失礼ですが、地元にある町内会、また消防団もそうですし、民生委員、児童委員の方もそうです。老人クラブ連合会、連合婦人会、いろいろ地域地域で活動されている団体なり、人なりがおられます。その中にはやや形骸化しているものもある。だけど、地域によってこの団体は非常にうまく活動しているというものが必ずあるはずです。そういう皆さん方といかに連携をして、たとえそれが消防団であっても、自主防災だけではなくて、その消防団を中心に自主防災の組織をつくっていく。そうすると、自主防災で災害に備えようというときには、独り暮らしのお年寄りだとか、障害を持った方がここにいるということが分かってくる。そういうことを今度は地域の見守りにというふうに、何かの切り口で入っていった取組というものが、違う切り口にも必ずつながってくるだろうというふうに思いますので、従来からあるいろいろな活動団体、NPOという何か新しいものをつくって、そこで新しい住民自治、地域の支援ということをしていくのではなくて、従来ある活動母体というものを入れていく。そうでないと、NPOだ、NPOだと言うと、民生委員、児童委員の方も、連合婦人会の方も、私たちはもう古い存在かなと、自分たちは相手にされてないのかなとも思われかねないと思います。そういうような地域の人材をいかに取り込んでいくかということが、一つは大きな課題ではないかなと思います。
  もう一つはやはり県だけではありませんけれども、市町村も含め、「公務員の、職員の意識」だと思います。先ほど60人の職員を現場に出しているということを言いましたけれども、地域のお手伝いをしていくということはもちろん大切な任務ですけれども、そういう仕事をすることによって、県庁の中で、役所の中でずっと朝から晩まで書類をつくる、それが自分たちの仕事だというふうな思い込みを捨てて、やはり地域の現場で自分たちが何か問題点に気付いていく。また、自分は高齢者福祉なんだ、自分は土木なんだというような縦割りの役割分担だけで仕事をするのではなくて、地域のある問題を、横につながった問題としてとらえて、その課題解決策を考えていく。そういう職員を養成していきたいというふうに思いました。そうやって現地に出て、地域支援企画員として何年かやってきた、そういう職員がまた県庁に戻ってくれば、県庁の中では組織上はその縦割りの中で仕事をせざるを得ませんけれども、組織はそうであっても意識のほうは横につながったものの考え方、事業のつくり方、施策のつくり方ということにつながっていくのではないかなと。そういうことがこのNPO活動、地域の支え合いの仕組みをつくっていくということの、私は県にとっての、役所にとっての大きな意義ではないかと、そういうことを少し時間がかかってもやっていきたいと思っています。

[新川コーディネーター]
新川   どうもありがとうございました。
  実はここまでお話をいただいた後、それぞれの県・市の取り組みについて、もう少し詳しく聞きたいなと個人的に思うところもあって、そういう時間もあらかじめ用意していたのですが、もうすでに予定をしておりました時間が、あと30分弱になってしまいました。
  今、ご提起をいただきました問題・課題、そして今後の展望ということについて、そろそろとりまとめの時間に移らなければならない、そんなところにやってまいりました。大変恐縮ですが、各パネラーの皆さま方には最後のご発言機会ということになりますので、まとめということも意識をされてご発言をお願いしたいと思います。
  現在までの活動と、そしてその中でこれからの方向や、あるいは問題・課題ということについて触れていただきました。やや乱暴にまとめてしまえば、一つはやはり本当にこうした協働の活動をもっともっと広げていかなければならないという点では一致している。しかし、そのための出発点はできてきているような気がするのだけれども、その先、これをさらにいろいろなところにどうやって広げていったらいいのだろうか。こういうところは共通の課題として出てきているのかなと思いながらお話を聞いておりました。
  そして大きな二つ目の課題は、やはりその中で大切なのは、人。人材の問題です。これも大きくクローズアップされたかと思います。それも市民の側、県民の側、NPOの側の人材の問題もありましたし、行政の側でこうしたNPOの活動、協働を進めていくというような、そういう活動に関心を持ち、そして行政の活動そのものも変えていくような、そういう職員をこれからつくっていかないといけない。そういうようなご趣旨のこともあったかと思います。そうした人をどうこれから育てていくのか。このあたりもぜひ今後の考え方、取り組みへの決意ということに関連して、ぜひお伺いをしてみたいというふうに思っております。
  そして大きな、重要な三つ目は、やはりこうしたNPO活動、行政とNPOの協働ということを考えていくときに、今回のこのフォーラムがNPOの範囲を、いわゆるNPO法人だけではなくて、さまざまな従来からある組織も含めて、特に地縁団体も含めて議論をしようということで始めさせていただいたところでございます。逆にそうした従来からあるさまざまな地域の活動を活発にし、そしてテーマ型の組織と上手に組み合わせをしながら、相互補完的に、また相乗効果的に新しい協働の姿を行政とともにつくっていく。そういうところが課題になってきたかと思います。そうしたテーマ型と地縁型、そして行政の新しい協働の姿。このあたりも重要なテーマになっているような感じが致しました。
  そして最後、大きな四つ目はやはり市町村の存在です。今日のパネルにご参加の市町村長は大和市長だけですけれども、県知事がそれぞれおっしゃるのは、やはり協働の中で基礎自治体というふうに呼ばれております市町村の役割が非常に大きいということで、市町村も巻き込んだ、市町村と一緒に進めていくNPO・行政の協働の推進というのが、それぞれの知事からも何がしか出てきたかと思います。このあたりも今後進めていかなければならない大きな課題かと思います。
  以上大きく4点ぐらいの課題があろうかと思いますが、このあたりを少し踏まえまして、またまとめの意味も込めて、今後の取り組みについて、お話をいただければ幸いです。それもあまり時間が無いので3分ぐらいでという制約をつけざるを得ない所であります。あれもこれも言えといいながら3分で済ませよというのは非常にひどい話でありますけれども、恐縮ですがよろしくお願いを致したいと思います。
  最後に課題をきちんとお話をいただいた橋本知事から、今度は回していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

[橋本知事]
橋本   第1回目の発言のときに、嘉田知事がかなり地域ということに着目をした歴史的な視点をお話になりました。私も子どものころ見た西部劇を思い出しますと、西部劇に出てくる町というのは、みんなで学校をつくり、公民館のような建物だとか教会をつくり、道路をつくっていたと思います。日本の昔もみんなそうやって地域でやれることはやってきた。先ほど嘉田知事が惣村とおっしゃったのですかね、そういうような基本的な自治というのは、みんなそうだったと思います。それがだんだん近代型の社会になってきて、行政・役所というものができ、役所に住民の側からいろいろな仕事をアウトソーシングしてきた。それが近代の歴史ではないかと私は思います。それもそれである程度右肩上がりの成長のときは良かったわけですけれども、そろそろ成熟した社会の中でもう一度役所が何もかも取り込んできた仕事というものを、地域の住民にお返しをしていくというのが今取り組んでいるアウトソーシングなり、また地域でのいろいろなNPOや住民団体を生かした地域の支え合いの仕組みではないかということから言えば、地域住民から役所のほうにアウトソーシングされたものを逆に戻していく、お返しをしていくというのが、今の歴史的な大きな流れではないかということを自分は思っています。
  そうした中で、先ほど申し上げたような人、地域で働く人、そして役所の側の人。それぞれの思いというものをきちんと連携し合えるようにしていくような仕組みをそれぞれの地域で考えていかなければいけないというふうに思いますし、私はこれだけやはり財政が厳しくなった中でも取り組んでいかなければいけない予算を使う事業としては、「研修」ということではないかと思うのです。それぞれの地域でも、いわゆる単なる支え合いの仕組みならいいですけれども、問題のあるお子さん方を見守っていくというような、例えば地域での今後大切な取り組みをしていくときには、かなり専門的な力を持った人が必要です。そういうことの研修ということに私はこれから行政としてお金をかけていかなければいけないのではないかということを思っています。
観客   ということに私はこれから行政としてお金をかけていかなければいけないのではないかということを思っています。 もう一つ、情報ということでひと言だけ言いたいのですけれども、いろいろな地域の支え合いをするときに、今、個人情報保護法などによる情報の扱い、そしてもう一つはいろいろないい取組をどうやってみんなで共有していくかという、2通りの意味での情報というのが大きな課題になっているように思います。個人情報の保護ということは、かなり今、時計の振り子が逆に揺れ過ぎて、非常に地域での取組みがしにくくなっています。これをもう一度もう少しバランスをとったものにしていくという、そのための仕組みをつくっていくということも今後地域で自治を進めるために必要なことではないかと思います。
もう一つ、いろいろな情報を共有をするということはとても大切なことで、先ほどお話のあったブログを使った、このお話はとても参考になったと思うのですが、一つだけ質問として言っておきますと、高知県でも「ぷらっとこうち」という名前でみんなで書き込みをしてということをやったのですけれども、やはり「2ちゃんねる」的な人がいる。行政が管理すると、なかなかそういう人を一方的に排除することができなくなるという難しさがありました。そこらへんを佐賀県ではどうされたのかなというのを、最後に質問として終わりたいと思います。

[新川コーディネーター]
新川   ありがとうございました。それでは、このご質問についてはあとで古川知事には、よろしくご回答をお願い致します。   それでは続きまして土屋市長、よろしくお願い致します。

[土屋市長]
土屋   4項目全部答えられるかどうか分かりませんけれども、逆に行きます。   県との関係。基礎自治体である私と県との関係ですけれども、役割分担をしろと。そうしないと同じことをやってると、中二階と揶揄される。その通りになってしまうぞというのを、前の岡崎知事と、今の松沢知事にも言っております。ややもすると、県というのは同じことをやりたがるのですけれども、私が言っているのは広域的なもの。警察とか、今いろいろ変えなければならない教育問題、教育委員会制度とか、それから環境問題、ごみの問題とか、こういう広域的なことを県はやる。あとはコーディネーターの役割を果たせと言っております。基礎自治体がやることは、基礎自治体がやればいい。地方分権推進法制定以来、対等と協力の関係になったというのは、これは国と地方の関係と同時に、都道府県と市町村の関係でもあると、私は考えております。
  れから従来の活動との互換性とか相乗効果ということですが、先ほどお話しましたように、私は協働とテーマ型・シングルイシューのようなことと、地域・エリア型というのを同時に進行させるようなことで重層的に、立体的に市民参加とか、協働というのをやっていると。これからもそれを進めようと思っております。慶応大学のある先生が大和市を評して、凄まじい民主主義を行っていると、熟議の民主主義が行われつつあるというような表現をしてくれました。褒められているのだと思いますが、そう言われました。
  これから人を育てていくことも重要だというふうに思っております。職員は言いました。この自治基本条例。自治基本条例なんか、ニセコ、その他先行している自治体の条例を持ってきて、ちょこちょこっとやれば、大和のまちづくり条例にもう少し何かを付ければ十分こんなものはできます。つくづくそれをうちの職員は言いました。市長提案で出せば、3ヶ月、半年でできるのにと。
  しかし、2年かけて182回も市民の皆さんがやった。これをやることによって、職員もブラッシュアップしたし、市民が何よりも条例というものに対して非常に関心を示し、理解を示し、そして条例を手に持って、タウンミーティングで私に質問をするような、そういう自治体になっているということです。最後に私が今言っていることは、発言をしろ、何か意見を聞かせてくれと。これも重要だと。汗を流してボランティア活動やってくれと。これも重要だと。
  もう一つ、お金も出せと言っております。アメリカではドネーション、寄付という文化があるではないか。日本は税金を取られるという。赤い羽根、歳末募金で私が駅前に立っておりますと、100円入れるのでも取られたような顔をして入れていく市民が多いのですが、お金がある人はどんどんお金を寄付しろと私は言っております。土地がある人は土地を寄付しろと言っておりまして。つい最近も、この12月補正で200万、会社が創立20周年だから200万寄付すると、友だちの会社が寄付してくれました。その直後にまた200万、夫が死んだので生命保険でという人がいらっしゃいました。補正の補正ですぐに入れましたけれども。ついその前はある企業の社長が大和にいるのですけれども、1億円寄付してくれました。私は寄付という文化をどんどん進めようとしている。そして行政が金を出すのではなくて、寄付をしてくれたお金に対して、今「マッチングギフト」ということで、その同額を行政が積み立てて市民活動の基金、基にしておりますけれども。所詮その半分は税金ですから、団体が半分出す、そして寄付が基の半分を出す、両方とも民・民がお金を出すことによって、行政がスモールガバメントになる。それが先ほどもお話ありましたし、今日のプログラムにはありますけれども、ガバメント、他者が統治をするガバメントから、私は自己が自己規制するというふうに訳しておりますけれども、ガバナンスを。ちょうどこの11月号で『都市問題』という東京市政調査会の本の論文で発表していますけれども、そこにも書いたのですが、ガバメントからガバナンスというのは、まさに自分たちが自分たちで統治をすると。スモールガバメントからガバナンスへというのが、私の理想の姿であるということで、まさに実験をし続けている。市民を、そして職員を。今日も最初から最後まで少しも議会の話も議員の話も出なかったので、本当は一番問題なのは議会と議員なのですけれども、そのあたりも変えていこうということで、今いろいろ仕掛けております。

[新川コーディネーター]
新川   どうもありがとうございました。残念ですが、議会の話はまた改めてということにしたいと思います。   それでは堂本知事、よろしくお願いします。

[堂本知事]
堂本   では私はその議会の話をすることにしましょう。
  9月の議会は大変感動することが起こりました。実は千葉県では、先ほどから申し上げているように、白紙の段階から県民・市民が参加して、いろいろな条例づくりや計画づくりをやっているわけですが、その一つに「障害のある人もない人もともに暮らしやすい千葉県づくり条例」、最初は「障害者差別禁止条例」というような名前だったのですが、これを県民の側から、ぜひ千葉でつくろうという提案がございました。本当にこれは行政で書くというよりも、1年間当事者である障害者、あるいはご家族、あるいは施設の人や企業の方や学校関係者やいろいろな人が入ってその条例づくりをしました。
  2月議会に出したところが、ある政党からの大変な反対で継続になりました。6月議会にも出しました。そうしたら、今度は取り下げなければ否決する。市民団体の人に翌日集まってもらって、どうしようかと言ったら、これだけ障害者の問題があらゆるところで、市町村で、学校で話された経験は今まで無い。だから、この火を消さないで。もし否決されたら、その火が消えてしまうという言われ方をしました。私にとっては苦渋と言いますか、大変な決心だったのですが、その条例を一旦提出したもの、上程したものを取り下げました。それからが大変だったのです。夏休みの間中、常任委員会の協議会を開いて、そこに当事者が出ていって、今度は議員と代表の人たちが議論をするということで、大変条例が深まり、それから県内のいたるところでそれの説明会が開かれました。
  それだけではないのです。また9月議会になったときにも、また廃案にするための大反対キャンペーンが議会の中で出てきました。なかなか議会はこういった民主的な手法を認めてくれようと、今、日本ではしない。おそらくそれぞれの自治体で首長は苦労していらっしゃると思いますが、私ももう本当に、それから県庁職員も苦労しました。そのときに、白い杖を持って、盲導犬に引かれて、車椅子に乗って、そして手話の方を連れて、170席ある県議会の傍聴席が連日のように満員になって、そして外にも70~80人多いときはおられたということです。しかもその案件についての議論というのは、たったの10分かそこらしかないのです。その間10時から午後3時まで、ずっと議会の傍聴席が満員になっていて、野次も飛びませんでした。まもなく統一地方選挙があるわけですから、反対もできません。結局満場一致で通過しました。もう本当に私は、議員がいなくなってから手を振ったのですが、みんなハンカチを出して涙を拭き、声の出ない方は手話で話をし、大変感動的な場面が展開されたわけです。これはその間ずっとNPO・市民が参加してやってきたことで、初めて新聞は「市民条例」と書きました。これが本当の姿なのだなと。民主主義はこうやってつくっていくんだなと。次は皆さんの代表を議会に送ってくださいと私は申しました。
  一言だけ付け加えさせていただくと、先ほどから出ている、昔あった村や町の助け合い、それが今度は新しい形での、こういった障害者、高齢者であろうが、あるいは企業であろうが、そういうところで21世紀型の人と人との信頼をまたつくっていく。そういったことと、このNPOと行政の協働というものは、全く一体的なものだろうというふうに思っています。本当の意味で、いい形でこれが全国的に展開していったときに、千葉の県議会であのようにして市民が議会を動かしたように、いずれは日本の政治を動かすときが来てほしいと、そういう願いでおります。

[新川コーディネーター]
新川   どうもありがとうございました。すばらしいお話をいただきました。これからは市民が議会も変えてしまうということが、本当に実現するといいのですがと言うと語弊がありますし、何かといろいろ誤解を招くことになりますので、ここでは取り消しておきます。   続きまして古川知事、よろしくお願いします。先ほどのブログのお話もあわせてお願いします。

[古川知事]
古川   その議会の話でいけば、私、堂本知事がこの条例の制定に苦労もされ、大変な思いをされている姿を見ていきながら、そしてぜひ佐賀県でもこういう条例だっていうことも頭の中でいろいろ考えたときに思ったのは、議会提案でできないのかな、議員提案でできないのだろうかということだったのです。議会の中で、最初に私たちが案をつくって、これでどうでしょうかとか、みんなでつくった案だからなかなか変えにくいというような状況をつくると、逆にやりにくいのかなというふうにも思いまして。とにかくそういうものをつくっていくときには、千葉の本当に何百ページにも渡る、本にもなるようなああいったものを見ていると、逆に私たちはこの千葉の経験というものを今度は自分たちの地域にあった形で何か生かしていかなくてはならないのではないかと思っています。誤解があるかもしれませんが、私は非常に議会からいつもいろいろ言われたり、怒られたりしていますけれども、ただでさえ首長というのは怒られることもありますけれども、そうでもないことが多い仕事なので、やはりやっていることがけしからんというように言われる場というのは、すごく大事なのではないかと私は思っています。
  それと、先ほど橋本知事がブログの話をしていただきました。ぜひ皆さん、「CSOブログ」というキーワードで検索してみてください。佐賀県の市民活動応援ブログが出てきます。そして本当に荒れない場できちんと確保されています。その秘訣は何かというと、私はやはり管理人の姿ということにつきるのではないかと思います。何かこういう人がいないかということがあれば、管理人も一緒に探してきています。これ見てごらんと。こういうふうなものが出ているから、返事してみたらとか。まるで自分の子どものように、そのブログを、そのサイトを大事にするという管理人がいることによって、場が荒れずに済んでいるということではないかなと思います。実際に例えば人を募集するときにそこに書いてみたら、応募があって、それでよかったよというふうなことがやり取りされます。そうすると他の人も、では自分たちもやってみようかというふうないい反応ができています。だんだん大きくなってくると余計なものも入ってくるのかもしれませんけれども、うまい具合にこのサイトそのものは、佐賀県は佐賀県CSO推進機構と佐賀県の県民協働課が協働で立ち上げているということになっています。行政が消しにくいものはCSOが消したことにしたとか、いろいろその辺はうまくやり取りをして、とにかく場が荒れないようにしていかなければいけないということを、先ほどお話を聞きながら感じました。
  それからもう一つ、自分たちは大和市のようにすごく進んでいるところもあれば、自分の町はなかなかだという市役所の職員の人もいますし、地域で活動してらっしゃる方から見てうちの市長はどうにかならないものですかというふうな相談を受けることも私はあります。そのときに申し上げているのは、やはり選挙は大事ですよと言っています。誰かが選ぶ首長とか、議員とかではなくて、やはり自分たちの思いを伝えていく人を代表にしていくということはすごく大事で。ここにいらっしゃる方はやはり選挙でみんな選んでいただいて、そういう市民活動とか、県民協働とかそういったことに理解と関心とやる気のある、私も含めて言えば、そういった人がこういった場に来ているわけで、そういった人を、何か次に首長選挙があるようなときには、ぜひある大きな塊でぜひ候補者の人に、こういったことを一緒にやりませんかというふうな提案をしていくとか、ぜひ協働とか、そういった市民活動を一緒にやっていこうというようなことをぜひマニフェストの中に入れませんかとか、そんなふうなことをぜひやっていただきたいと思うのです。わが国では、政治もスポーツもやるよりも見るほうが盛んな社会であります。でも、スポーツは見るだけでもかまいませんけれども、政治は必ず見るだけではなく、結果が自分たちに降りかかってきますので、その意味では、やはりぜひ自分たちにとってよりよい社会をつくり上げていくためには、やはり自分たちの代表をつくっていくということをぜひ知っていただければというふうに思っているところでございます。
ステージ   それと私たちも悩みはすごく、今日もここへ来られているような、そういう力もあり思いもあり、また一定の組織力もあられるような方はいいのかもしれませんけれども、多くのNPOや、最近非常に会員の減っている地縁団体というのは、なかなかこういう研修にも来れませんし、力がありません。そうすると、行政が協働と言うと、実はある一定のCSOにものすごく集中してしまうのです。何か行政の仕事を受け入れているだけで、一体自分たちは何のためにNPOを立ち上げたのだろうかとか、そんなことが分からなくなるというようなことをよく言われます。そうするためにも本当は広げていかなければならないのです。先ほど橋本知事もおっしゃいましたけれども。広げていくのに、どうやって広げていったらいいのかというのは、われわれの悩みでもありますが、幸いなことに今度団塊の世代の方が大量に退職されていきます。あの方たちが退職されることで何が増えるだろうかと議論したら、ひげとそば打ちとNPOという話があって。まさにそういった老け込む歳ではない、やはり市民社会に関心をもっている人が増えていくということが考えられますので、ぜひそういう方たちを仲間に入れていくということを私たちもやりますし、ぜひ一緒に盛り上げていきたいと思います。
  最後なのですが、先ほど来、NPOの定義みたいなものについて、地縁団体を含むのかどうかといろいろ議論ありますよね。例えばこの参加者アンケートというのがありますが、元々今日のフォーラム自体はNPOという言葉には地縁団体を含みますということになっています。ところが参加者アンケートの一番最初、「所属について」と書いてあるときに、「ア NPO イ 自治会・町内会」と書いてあるのです。ここにおいては明らかにNPOと自治会・町内会を区分してという意識になっているのです。NPOという言葉は、もちろん「Non Profit」ですから、どんなものも「Non Profit」であればNPOに含まれるということだと思いますが、意図的に「志の縁」だけでなく、地縁団体も含むというふうな方針をこれからわが国の大きな流れで出していくときには、やはり何かのふさわしい名前が必要なのではないかと私は思っています。そういう意味では、私たちは今、市民社会組織・CSOという言葉を使っていますが、そういう言葉の問題についてもまた明日分科会で議論していただければと思います。以上です。

[新川コーディネーター]
新川   どうもありがとうございました。
  それでは最後になりますが、嘉田知事にこれからの地域づくり、その中で市民・NPOへの期待、それから今後の協働に向けての取組などにつきましてお話をいただきたいと思います。先ほどの古川知事のお話にもありました、まさにマニフェストで協働やNPOとの活動の推進を嘉田知事は謳ってこられたということもありますので、よろしくお願いします。

[嘉田知事]
嘉田   今、本当に日本の地域自治というのは、明治以降140年ほどの中で大きな曲がり角にある。先ほど橋本知事が言ってくださったように、まさに歴史返りをしている時代だろうと。それは自助・共助でつくり上げてきた自分たちの地域、それが公、公助というところにぐっと傾いたのですけれども、もうやり切れない。そしてみんな遠い遠い世界に行ってしまって、お金はかけるけれどもなかなか満足できないサービス。これを自分たちの手に取り戻すという、大変大きな時代の曲がり角にあるのだと思っております。そのときにあらためてやはり今日のテーマであります横糸としてのエリア型と縦糸としてのテーマ型、このそれぞれをしっかりと見極めながら、いいところをつないでいく。その役割を、例えば県や市町の職員はどうしていったらいいのだろうということが課題だろうと思っているわけです。
  エリア型・地域自治会型の問題を申し上げますと、お金は比較的あります。例えばため池を売ったお金があるとか、共有林を売ったお金があるとか。それから何よりも多くのところが草の根ハウス、あるいは建物そのもの、場がある。それから人も比較的ちゃんとリクルートされております。自治会長、あるいはいろいろな役員。ただエリア型で一番問題なのは、私はやはり女性の参加が少ないということだろうと。もちろん地域婦人団体というのはあるのですけれども、どちらかというと男は男、女は女で分かれてしまっている。1980年代に滋賀県の地域自治会の女性の代表者の数を数えました。3,000自治会のうち、たった3人でした。今そこがようやく100人ぐらいになっているのです。でも今3,300自治会のうち、100人なのです。このあたりが、女性の参画というところがエリア型では問題だろうと。
  一方、テーマ型でということですけれども、経済基盤・人的基盤が大変ある意味で不安定です。福祉のところなどは比較的事業費があるのですけれども、環境であるとか、あるいはまちづくりというところはなかなか経済基盤・人的基盤ができておりません。こういうところを、やはり行政としてはしっかりとバックアップさせていただかなければならないのだろうと思っているのですけれども。
  県として、今、私自身まだ本当に新米の知事で、県職員の皆さんに呼びかけているところなのですけれども、まず今までもずいぶんご指摘ありましたけれども、自分たちがやっている仕事、それは緻密に一字一句法律をつくったり、条例を直したり、あるいはいろいろな調整したり、最終は県民の皆さんの生活の幸せづくりなんだと。県政というのは、最終どこに向いているか。それをいつもいつも気にしていく。自分の仕事は、どう県民の皆さんの生活とつながっているのか。そのときの大変大事な能力はもちろん法律を解釈する能力、あるいはそれぞれの技術的な、河川改修なら河川の能力とともに、対話する。そしてそこからさまざまな共感の思いをつくり上げていく。対話と共感の能力。ここが大変これからの自治体職員にとって求められることだろうと、県職員の皆さんには今呼びかけているところでございます。   そのときに、実は私自身も今議会の応援をいただかずに選挙で上がってしまったものですから、ずいぶん議会との関係、それぞれに難しいところがありますけれども。議会の皆さんもみんなが選んだ、首長も選んだ。そこに民意というのをどうつくり上げていくのかというところに、さまざまなずれがあります。それは先ほどのエリア型・テーマ型のところから自分たちが本当にこの両方を積み上げる中で、10年後20年後どんな地域自治をつくり上げていくのかということを、それこそ一人ひとりが自覚しながら、自分の1票がどう次の20年後30年後につながるのだろうというところでの、やはり1人ずつの自覚のところに最終戻ってこざるを得ないのではないだろうかと思っております。
  そんなところで、対話ができる、そして共感を自ら育むことができる職員。もちろん行政としての法律の知識も必要です。あるいは平等性・公平性という思いも必要です。その二つのところでバランスをとれるような職員。そういう人が県でも市町村でも育っていく。実は私自身もそれを自ら育てていかなければいけないのですけれども。ともに歩んで行けたらということが、今大きな時代の曲がり角にある行政の協働の自治をつくり上げていく上での役割だろうと思っております。

[新川コーディネーター]
新川   どうもありがとうございました。 本当に5人の知事・市長の皆さま方の貴重なお話を賜り、そしてまた将来に向けてのしっかりとした展望、そして強い決意をお話いただけたかと思っております。
  予定の時間が来ておりますが、最後に一言だけ、今日この5人の皆さま方にお教えいただいたことというのを、お話申し上げます。とりあえず反省を踏まえつつ、今後のNPOと行政、あるいは住民組織と行政との協働によるこれからの地域づくりのために、何点か考えておきたい点をまとめておきたいと思います。
  一つはこうした市民あるいはNPO・住民団体、地縁組織も含めて幅広い協働というものが、これからの新しい自治をつくっていく、新しい地域をつくっていく、そういうきっかけになりつつあるという認識が共有できたのではないかというふうに思っています。そこでおそらくNPO法でいうNPOと、そして自治会・町内会を区別する理屈というのは、それほどのことはないということだろうと思っています。
  大きな二つ目は、そうした協働型の社会に向けて、今実質的な取組に皆さんもうすでに入っているのだということをあらためて認識をさせられました。形だけ、とりあえず流行りだから協働をやろうというようなことは、今日壇上においでの知事、市長にはこれっぽっちもありませんでした。そうした本当の協働に向けて、中身のある協働、それらはいずれは新しい自治の姿に行きつくわけですが、そういうものへの一歩が実際に進んでいるという実感を得られました。しかし、それはまだ始まったばかりという印象も同時に持つことになりました。これからということだろうと思います。
  三つ目はそうしたこれからの協働型社会をつくっていこうというときに、やはり県だけではなくて、市町村の力というのが大きいということです。今日は基礎自治体からは市長がお一人だけでありましたけれども、むしろ県と市町村の本当にいい協働関係、いわば公公協働というのをこれからしっかり考え、そしてそれが地域の本当の市民の力、地域の力を育て盛り上げていく、またその質を高めていくような、そういう新しい関係づくりを市町村との間でつくっていかないといけない。そういう時代になったのだということを認識させられました。
  大きな四つ目は、専門性ということについていろいろな場面で強調されてきました。最後に嘉田知事は、共感をする力といったようなところに、特に行政職員の役割を強調されましたが、本当にそうだなと思いながら聞いておりました。さまざまな専門能力、専門性が、これからの新しい自治をつくり上げていこうとするときに求められていると思います。そういう専門能力については、それはNPO、あるいは地域団体・地縁団体にも求められると思います。そしてもちろん行政組織にも、またその行政職員にも求められると思います。そうした力として、どんな力が必要なのか。そしてそのためにどんな力をつける努力をしていったらいいのか。今あらためて考えなければならない課題だと思いながら聞いておりました。
ステージ2   全体を通じて、今日のお話の中で印象的だったのは、ただ単に協働という目先の新しい組み合わせを考えるというような話でなくて、その中にこれからの地域社会のあり方、そして本当の意味での一人ひとりの市民・県民の将来の姿、将来の暮らし、そうしたものを見通した協働を通じてつくり上げられるこれからの地域社会というものをしっかり考えていこうという点でした。またそういう姿勢が一貫して感じられたことでありました。これをそれぞれの地域に、またあらためて成果としてお持ち帰りいただき、そしてこれをきっかけにそれぞれの地域づくりがさらに一層よりよく進むことを期待させていただきまして、とりあえず雑なまとめでありますけれども、私の最後のまとめにさせていただきたいと思います。
  今日は本当に5人の知事・市長の皆さま、ありがとうございました。そして会場の皆さま、長い時間おつきあいありがとうございました。
  私の出番は以上にさせていただきます。