社会は、サービス提供の担い手として、「行政」、「企業」、「ボランティア・NPO」の大きく三つをあげて考えることができます。
「行政」は税を財源とし、法に基づき公平・平等を原則に、均一で安定したサービスを提供してきました。また、「企業」は利潤追求を原則として、対価に応じた多様なサービスを提供してきたということができます。
これまで、わが国は主に「行政」、「企業」の二つの活動によって成長発展してきました。その結果、「行政」と「企業」の活動の占める割合が大きく広がってきましたが、これだけでは現在の社会経済情勢の変化には十分対応できない面も見られるようになってきました。
今後さらに多様化、複雑化する県民のニーズに対応し、これからの社会をより豊かなものにしていくためには、「行政」や「企業」とともに、自主性・自発性、柔軟性等を原則とする「ボランティア・NPO」に社会の担い手として大きな期待が寄せられており、「ボランティア・NPO」がさらに力をつけ、三者がそれぞれバランスよく機能していくことが望まれます。
また、「ボランティア・NPO」の活動は「行政」と同じ公共的・社会的な側面を持っており、同じ公共的サービスを「行政」と「ボランティア・NPO」が担っていく場合には、お互いの特性を生かせるよう役割分担のあり方を見直していく必要があります。
その場合、「行政」と「ボランティア・NPO」は並立、対等の立場で相互に補完し合うものであるということを基本に、「本来的に担当すべきかどうか」、「担当が可能かどうか」、「どちらが効率的で効果的か」という視点に立って、個々の役割分担を考えていくことが重要といえます。
今後、「行政」と「ボランティア・NPO」が、ともに公共的サービスを提供していく実践の場面では、行政と活動団体がお互いにパートナーであることを認識し、協働していくことが重要です。
協働とは、共通の目的の実現のためにそれぞれが自らの役割を自覚し、ともに考え、ともに汗を流して取り組んでいくことであり、参加者の理解を促し、お互いが主体的に関わりを持って事業を進めることが可能になります。
県は、県民主役の県政を推進するためにも、パートナーシップによる協働をさらに展開していく必要があります。
なお、ここでのパートナーシップとは、お互いが協働をしていくために必要な関係であり、パートナーシップは全ての協働の前提になるものです。
行政と活動団体が協働していく場合、お互いの間に築かれるパートナーシップには行政が主体的に関わるもの、活動団体が主体的に関わるものなど、その関わりの程度は様々なものが予想されますが、いずれの場合にも、上下の関係をつけることなく、信頼関係に基づいた良好なパートナーシップを構築する必要があります。
良好なパートナーシップを構築するためには、活動団体を行政への協力団体としてとらえるのではなく、独自の主体的な存在として尊重し、自立した関係を維持しながら、役割と責任を明確にし、それぞれの力量の違いを補完しあい、対等な関係をつくっていくことが大切です。
また、行政と活動団体の間に情報の偏りがあってはなりません。そのため、説明責任(アカウンタビリティ※)の観点からも公的情報の公開を一層進めていく必要があります。一方で、活動団体からの情報提供も受けながら、お互いの情報を共有していくことが大切です。
さらに、これまでも行政施策を展開していくにあたっては、住民参加を基本において施策の実施に際しての意向調査などに取り組んできましたが、今後、県民の意向やニーズに一層的確に応えるためには、県民や活動団体に政策立案過程への参画の機会を確保していくことも重要となってきます。
こうしたこととともに、身近なことから実績を重ね、パートナーシップを段階的に構築していくことが、よりよいパートナーシップにつながるものといえます。
| ※アカウンタビリティ accountability(説明責任)
本来は委託者に対する受託者の説明責任ないし会計責任を意味していたが、その意味が広がり、現在では、委託者たる国民に対する受託者である政府の応答責任と解されている。(出典:森田朗「アカウンタビリティと自治体職員」’98年) |
(1) 協働の現状
これまで県内で取り組まれてきたパートナーシップに基づく協働の事例には、県民の社会貢献活動の事例としてあげた「せっけん運動」などの他に次のようなものがあります。
○福祉
皆で支えあうまちづくりを実践するため、高齢者、障害者、子育て中の親等の仲間づくりをする中で、集会所等での交流の場づくりに取り組み、給食サービス等の活動を展開したもの
○公園整備
住民に愛され親しまれる公園づくりを目指し、住民と行政がワークショップ※の手法を用いて、ともに討議し、提案をまとめ、公園を整備したもの
○まちづくり
歴史的建造物やまちなみの保存活用を契機に、商店街を活性化するという地元の取り組みに、行政、企業が賛同し、まちづくりを展開したもの
○観光
観光客のニーズに応えるため、行政と観光ボランティアがワークショップを通じて観光資源を掘り起こし、新たな観光ルートを開拓するとともに、後継者をボランティア自身が自主的に養成したもの
○地場産業
生活改善グループによる農産物等の加工・販売による地場産業おこしの取り組みに、行政は施設を提供し、グループは農事組合法人化をして事業を展開したもの
○農村整備
公共事業の計画と実施にグラウンドワーク※の手法を用いて、住民、専門家、行政のパートナーシップにより、それぞれの意見を取り入れて水路のある景観を整備したもの
○伝統文化
廃校となった校舎の有効活用に、地元の有志が協力し、活用について自主的な研究会で検討した後、展示品を自分達で作成し、開館後の運営にも携わったもの
○環境保全
琵琶湖に流入する河川およびその集水域を対象に、水質の改善や豊かな生態系を取り戻すことをめざして、住民、自治会、各種団体、企業等が協議会を設立し、行政と一体となって知恵と力を出し合い活動を展開したもの
※ワークショップ workshop
課題について、関心を持つ人が集まり、小さなグループに分かれて調査、学習、提案、討論など密度の濃い合意形成のための作業を行うこと。(出典:三村浩史「地域共生の都市計画」’97年)
※グラウンドワーク groundwork
行政、企業、住民がパートナーシップを組み、グラウンド(生活の現場)に関するワーク(創造活動)により、生活の最も基本的な要素である自然環境や地域社会を整備・改善していく活動。(出典:「グラウンドワ
ーク活動」財団法人日本グラウンドワーク協会)
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(2) 協働における課題
協働についての一般的な理解はできても、実際に取り組むとなると県民・行政双方の新たな関係構築のためには時間がかかるという問題や、協働によって行政としての責任が不明確になるといった問題などがあります。
今後、協働をより効果的なものにしていくためには、ワークショップやグラウンドワークなど協働のための具体的な手法を活用するとともに、過去の事例を生かしながら、目的や課題に応じた新たな手法についても検討していく必要があります。